世界遺産清水寺など歴史的な建造物が集まる京都市東山区で、景観保全を目的にした市条例に従わず許可なく外観を変更したとして、市は10日午前、産寧(さんねい)坂伝統的建造物群保存地区(伝建地区)にある針金細工店に対し、行政代執行に踏み切り、無許可で塀に設けられたショーウィンドーを板でふさいだ。市によると、伝建地区における景観保全のための行政代執行は、全国初という。
 建物は木造2階建てで、建物と塀が一体となった「高塀(たかべい)造り」と呼ばれる伝統的な日本建築。チリ出身の工芸職人の男性(51)が借り受けて、針金を加工してミニチュアの自転車を作る工房を経営している。市によると、男性は市の許可なく高塀の一部をショーウィンドーとして開放し、外壁にカウンターを設置した。市は市伝統的建造物群保存地区条例違反にあたるとして、昨年7月から是正指導や命令をしてきた。カウンターは撤去したが、ほかは従う兆しがないため行政代執行に踏み切った。
 男性はこの日、「ショーウィンドーを閉めるのは店を閉めるのと一緒。行政代執行は悲しい。ほかの町に店を移すかもしれない」と話した。市景観政策課は「放置すれば伝統的建造物群保存地区の景観保全に大きな支障をきたす。例外は認められない」としている。

本記事では,京都市における景観保全の取組を紹介.同取組の経緯は,同市HPを参照*1
まずは,「京都市産寧坂伝統的建造物群保存地区内の伝統的建造物に該当する本件建築物」で,同「条例第4条第1項」に基づき「建築物の外観変更の許可を受けなければならない」ところ,「当該許可を受けずに外観の変更」*2を実施.同市では,2013年7月9日に「景観政策課職員による現地調査」*3が行われ,外観の変更が「行われていることを確認」した後,「再三にわたり違反者に是正指導」*4を実施.その後,同年8月19日には「指導のため来庁を指示」,同年10月30日には「是正勧告書」を「送付」*5した.
「この後も度重なる是正指導」*6を行いながらも「自主是正の兆しがないため」,2014年6月27日*7には「是正の措置を命じ」*8る.しかしながらも.「命令の履行期限を過ぎても外観の変更が行われている*9」ことから,「これ以上現状を放置する」と「景観を阻害する要因となり」「かつ公益に反すると認められるため」*10
行政代執行という「強制手法」*11を2014年12月10日に実施.行政代執行の実施に関しても,同年8月6日に「履行期限」を「8月27日」として,「違反者」へ「行政代執行を実施する旨の戒告書」を「手交」するものの,8月28日時点で「戒告の履行期限を過ぎても外観の変更が行われている」ため,同年11月26日に「違反者」へ「代執行をなすべき時期」「代執行のために派遣する執行責任者の氏名」「代執行に要する費用の概算による見積額」を「代執行令書」*12として通知.行政代執行後での店舗の景観の様子は,要確認.

*1:京都市HP(まちづくり景観広報資料・お知らせ【お知らせ】「京都市伝統的建造物群保存地区条例」違反者に対する行政代執行の実施について)「「京都市伝統的建造物群保存地区条例」違反者に対する行政代執行の実施について」(平成26年11月26日 都市計画局)

*2:前掲注1・京都市(「京都市伝統的建造物群保存地区条例」違反者に対する行政代執行の実施について)1頁

*3:前掲注1・京都市(「京都市伝統的建造物群保存地区条例」違反者に対する行政代執行の実施について)2頁

*4:前掲注1・京都市(「京都市伝統的建造物群保存地区条例」違反者に対する行政代執行の実施について)1頁

*5:前掲注1・京都市(「京都市伝統的建造物群保存地区条例」違反者に対する行政代執行の実施について)2頁

*6:前掲注1・京都市(「京都市伝統的建造物群保存地区条例」違反者に対する行政代執行の実施について)2頁

*7:前掲注1・京都市(「京都市伝統的建造物群保存地区条例」違反者に対する行政代執行の実施について)2頁

*8:前掲注1・京都市(「京都市伝統的建造物群保存地区条例」違反者に対する行政代執行の実施について)1頁

*9:前掲注1・京都市(「京都市伝統的建造物群保存地区条例」違反者に対する行政代執行の実施について)2頁

*10:前掲注1・京都市(「京都市伝統的建造物群保存地区条例」違反者に対する行政代執行の実施について)2頁

*11:北村喜宣『環境法第2版』(弘文堂,2013年)112頁

環境法 第2版

環境法 第2版

*12:前掲注1・京都市(「京都市伝統的建造物群保存地区条例」違反者に対する行政代執行の実施について)2頁