東京都の小池百合子知事は八日の定例記者会見で、飲食店などを原則屋内禁煙とする罰則付きの都受動喫煙防止条例の素案を公表した。二〇一九年九月までの施行を目指す。厚生労働省の検討案と同じく、面積が小さいバーやスナックなどを例外とした上で、従業員がいないことなども要件に入れ、厚労省案よりも厳しくする。
 小池知事は、五輪・パラリンピックの開催都市は対策を講じてきたとして「受動喫煙は健康に悪影響を与えると科学的にも明らか」と指摘。東京大会に向けて制定すると説明した。飲食業界の反発も予想される。
 素案では、禁煙のレベルを三つに分類。医療施設や学校などは「敷地内禁煙」、体育館などは「屋内禁煙」。飲食店などは「原則屋内禁煙」で、喫煙専用室を設けることもできるが、食事をしながらたばこが吸える「喫煙席」の設置はできない。
 例外は、厚労省案と同じく面積が三十平方メートル以下のバーやスナックなど主に酒類を提供する店。都はさらに、従業員がいないか、全従業員が喫煙に同意して、未成年者を入店させない、という条件をつけた。
 葉巻や加熱式たばこも対象で、違反した施設や喫煙者への罰則は五万円以下の過料。八日から約一カ月間、素案への都民意見を募集して条例案をまとめ、本年度中に都議会に提出。周知期間を経て一九年九月に開幕するラグビーワールドカップまでの施行を目指す。
 受動喫煙対策を巡っては、厚労省が規制強化を検討しているが、自民党の反対で調整が続いている。小池知事が国に先駆ける形で提案した背景には、自民への対抗意識もありそうだ。
 都議会では都民ファーストの会公明党が、自動車内や家庭内で子どもの受動喫煙防止に特化した別の条例案を今月の定例議会に提出する予定。この条例案に罰則規定はない。

本記事では、東京都における受動喫煙防止条例素案の公表を紹介。
同都では、2017年9月8日に「受動喫煙防止対策」を「より一層推進していく」ことを目的に「条例制定にあたっての基本的な考え方」*1を公表。同「考え方」では、「不特定多数の人が利用する施設であって、室内またはこれに準ずる環境」を「多数の人が利用する施設」*2と定義し、「一般的な紙巻たばこのほか、葉巻、加熱式たばこなど喫煙に用いられるもの」*3の「喫煙」を「禁止」*4案が提示。
具体的には、「医療施設、小学校、中学校、高等学校、児童福祉施設等」は「敷地内禁煙」、「官公庁施設、老人福祉施設、大学、体育館等」は「屋内禁煙」*5とし、「飲食店、ホテル、旅館、娯楽施設、事業所、百貨店、駅、空港ビル、船着場、バスターミナル等」に関しては「喫煙専用室設置」を「可」とし「原則屋内禁煙」*6との案が示されている。なお、「飲食店のうち」「面積30m²以下のバー、スナック等」では「従業員を使用しない店、又は全従業員が同意した店、かつ未成年者を立ち入らせない店」は「利用者が選択できる掲示を義務付けた上で、喫煙禁止場所としない」*7ことも提示。そして、「違反した喫煙者本人や施設管理者」には「勧告や命令等を行い、それでもなお違反する場合には、罰則が適用」し、「5万円以下の過料」*8が検討されている。
「喫煙場所を包括的に制限」*9する同条例素案。今後の検討状況は,要経過観察.

*1:東京都HP(都政情報報道発表これまでの報道発表 報道発表/平成29(2017)年 9月東京都受動喫煙防止条例(仮称)についてご意見を募集)「東京都受動喫煙防止条例(仮称)の基本的な考え方」( 2017年9月8日,福祉保健局)、1頁

*2:前掲注1・東京都(東京都受動喫煙防止条例(仮称)の基本的な考え方)4頁

*3:前掲注1・東京都(東京都受動喫煙防止条例(仮称)の基本的な考え方)3頁

*4:前掲注1・東京都(東京都受動喫煙防止条例(仮称)の基本的な考え方)4頁

*5:前掲注1・東京都(東京都受動喫煙防止条例(仮称)の基本的な考え方)5頁

*6:前掲注1・東京都(東京都受動喫煙防止条例(仮称)の基本的な考え方)6頁

*7:前掲注1・東京都(東京都受動喫煙防止条例(仮称)の基本的な考え方)6頁

*8:前掲注1・東京都(東京都受動喫煙防止条例(仮称)の基本的な考え方)9頁

*9:田中謙『タバコ規制をめぐる法と政策』(日本評論社,2014年)302頁

タバコ規制をめぐる法と政策

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