荒井正吾知事は30日、県内の悪い景観100選を公募し、来年度までに写真展を開く構想を明らかにした。県などは「平城遷都1300年記念事業」を2010年に開催する。観光地・奈良の改善点を発掘、景観向上に向け「自虐的」とも言える荒業に打って出る。
 荒井知事はこの日、県庁であった県観光戦略推進本部の初会議で100選募集を指示した。看板で遮られたり、ごみで景色が台無しになっている景観の写真を募集し、100点を選ぶ。県内の会場で展示、県で改善策を検討する。一方で、眺めの良い景観100選も募集、展示する。荒井知事は「平城遷都記念事業でせっかく多くの人に来ていただいても、悪い印象を持たれたら何にもならない」と話している。

同記事では、奈良県で県内の悪い景観を展示する企画があることを紹介。「平城遷都1300年記念事業」の一環として、景観の向上を図る意図のよう。
自治体で、市民参加等により、各自治体の「美しい」景観を選出する取り組みがある。例えば、本日の学生さんの報告にもあった、鎌倉市であれば「かまくら景観百選研究会」がある。一方で、この展示会は敢えて「醜い」景観を選ぶとある。同記事では「自虐的」とも評されているが、同仕組みを履行確保のための「公表」と捉えてみると、行政手法上興味深い。つまり、いわばソフトな事前規制として、公表に先立ち勧告を行うことで、改善する事業者等も出てくる可能性もある(もちろん、むしろ県が広報してくれると、これ幸いと思い居直る事業者等が出てくる可能性もあるが)。そして、展示会場に行ってみて、「県が考えた醜い景観は全て当日までに改善されました」となれば、同発言の意図が実現したことになる。そのため、同県が現在策定を進めている景観条例・景観計画に同仕組みを整備し、景観保全のための「常備薬」とすることも一つのアイディアといえる。
ただ、いわずもがな、美しい景観はもちろん、醜い景観を紹介する場合も、見る人の世代や立場により異なるもの。説明根拠が必要*1

*1:五十嵐太郎『美しい都市・醜い都市』(中央公論新社、2006年)23頁、

美しい都市・醜い都市―現代景観論 (中公新書ラクレ)

美しい都市・醜い都市―現代景観論 (中公新書ラクレ)