浜松市で進む土地区画整理事業をめぐり、地権者らが計画決定の取り消しを市に求めた訴訟で、最高裁大法廷(裁判長・島田仁郎(にろう)長官)は2日、地権者側、市側の双方から意見を聴く弁論を開いて結審した。判決日は後日、指定される。
「計画段階では取り消しを求めて行政訴訟を起こせない」としてきた最高裁判例が、42年ぶりに変更されるかどうかが焦点。変更されれば、各地の区画整理をめぐる紛争の早期解決につながりそうだ。問題となっているのは、浜松市遠州鉄道上島駅周辺約5.7ヘクタールを対象にした土地区画整理事業。市が03年11月に事業計画を決定し、地権者らが不服として提訴した。地権者側はこの日の弁論で「行政訴訟では長らく住民の救済の幅は狭められてきたが、門戸を広げる近年の流れに従えば、計画段階でも当然に争えるようにするべきだ」と訴えた。浜松市側は「事業計画決定は行政の裁量が広く、利害関係者の権利救済手続きは立法により解決されるべきだ」などと反論した。(岩田清隆)

同記事では,浜松市における土地区画整理事業に関する計画決定の取り消しを巡る訴訟に関して,判例変更に関する審議を最高裁大法廷*1にて結審したことを紹介.
行政計画には「計画裁量」を策定側に認めるケースが多く*2判例からも,司法統制は,訴えの成熟性も十分ではなく,「消極的」・「実態的統制は困難」とされてきた.同判決次第では,その様相を転換させることになるのだろうか.また,行政計画については,司法統制の限界があるがゆえに,「手続統制」が非常に広がった領域ともいえる.そのため,翻って考えてみれば,同判決は,これらの手続統制の限界も又指摘することでもあり,自治体側としては従来の手続の再検討(恐らく,各種諮問機関(委員会・審議会)の機能・位置づけも含むことになる)を少なからず要請されることにもなるのではないだろうか.例えば,「この手続の先に訴訟有り」,と思えば,各所管部門の計画策定(形成)段階においても,法務担当部門が関与する機会は少なからず多くなりそう.そのうち,特に「厭疎主義」的に振る舞うことを指向する自治体では事前の抑止・予防・対応策を図るためには*3,法務担当部門の照会等といった「庁内手続」の整備が広がることになるのだろうか.要観察.

*1:ダニエル・H・フット『名もない顔もない司法』(NTT出版,2007年)70頁

名もない顔もない司法―日本の裁判は変わるのか (NTT出版ライブラリーレゾナント)

名もない顔もない司法―日本の裁判は変わるのか (NTT出版ライブラリーレゾナント)

*2:西谷剛『実定行政計画法―プランニングと法』(有斐閣,2003年)47頁

実定行政計画法―プランニングと法

実定行政計画法―プランニングと法

*3:金井利之「自治体法務と訴訟マネジメント」『分権型社会における自治体法務』(財団法人日本都市センター,2001年)118〜121頁