盛岡市は10月で中核市移行から半年が経過した。保健所開設など県から移譲された事務事業はほぼ順調に推移しているが、市保健所と県の県央保健所が一部で「二重行政」状態となるなど、課題も浮かび上がる。県は現在、2010年度をめどとする地方振興局再編に向け、権限を増した盛岡市とそれ以外の広域圏の市町村との調整をどう図るか検討している。地方分権が叫ばれる中、中核市移行のメリットを生かす効率的な仕組みづくりが求められる。
 盛岡市神明町の市保健所微生物検査室。市立病院から今春異動した神光輝主任臨床検査技師は「正確な検査結果を迅速に出すことが市民の命を守ることにつながる。一日も早く独り立ちしたい」と意欲的に業務に励む。盛岡市中核市移行により、それまで県にあった保健所関係の権限が移譲された。これに伴い、県は盛岡保健所を県央保健所に名称変更、盛岡市以外の盛岡広域圏7市町村を管轄している。しかし、全権限が盛岡市保健所に移ったわけではない。例えば病院など医療機関の監視権限は移譲されたが、医療機関で扱う麻薬の監視権限は県央保健所のままだ。国の法律で定められているためだが、市保健所の高橋徹参事兼企画総務課長(県派遣)は「市保健所が両方できれば効率的。しかし権限外の業務は行えない」と新たな法整備の必要性を感じる。一方、県にとっては地方振興局再編の中で、盛岡市との関係をどうするかが課題。盛岡地方振興局の望月正彦局長は「一義的には基礎的自治体である市町村の機能強化が重要」としながらも、「合併が進んでいない現時点で、広域全体を見据えた施策を推進する振興局の役割も大きい」と説明する。こうした中、市独自の取り組みも動き始めた。屋外広告物の許可権限が移譲されたことを受け11月からボランティアを募集、ヤミ金などの違反広告物撤去を官民協働で行う方針だ。谷藤裕明市長は「新たな権限や財源をより市民に身近な視点で活用していきたい」と官民協働の一層の推進を強調し、県との関係は「振興局再編の議論を見ながら考えていく」と話す。県立大総合政策学部の倉原宗孝准教授は「市民も盛岡らしさをしっかり見つめ、行政とともに個性あるまちづくりを進めるべきだ」と指摘する。盛岡市中核市移行とは 06年1月の旧玉山村との合併で人口が30万人を超えて中核市の要件を満たし、今年4月1日に移行。東北では5番目、全国の中核市は39市。保健所設置や屋外広告物の規制、身体障害者手帳の交付など県から約1850件の事務事業が移譲され、市民サービス向上と独自のまちづくりが期待されている。

同記事では,本年4月1日に中核市に移行した盛岡市の現状を紹介.4月28日付の本備忘録では,移行直後の様子を,他市との比較を持って紹介した毎日新聞の分析記事を見たが,同記事では,半年後の姿を紹介.10月11日付の本備忘録でも紹介した10月10日の岡山市政令指定都市移行を閣議決定の際には,前橋市大津市尼崎市の3都市については,中核市移行への閣議決定がされており*1,新たな中核市の観察においても共有される課題認識なのだろうか.
同記事では,屋外広告物の許可権限移譲に伴い除却に関する積極的な取り組みが開始されている様子を紹介する一方で,麻薬取扱者免許を県保健所にて所管することにより,保健所業務が分立状況にもあるとの認識があることを紹介.
麻薬取扱者免許に関しては,地方分権改革推進委員会では「分担型」*2に整理されており,厚生労働省の見解としては,「正規の医療用麻薬等が横流し等不正に流通されないよう監視監督するためには,これらの許認可を都道府県に移譲して各都道府県が相互に連携して対応するよりも、現行の国の許認可体制により行うことの方が合理的・効率的」として,「万が一の事故時においても統一的・迅速な対応が可能であることから」「地方厚生局において実施することが適当」とされている.一方で,同記事とも関連する「既に都道府県が行っている流通・施用等に係る小売業者(薬局等)・医師等の許認可」に関しては,「業者等の数も非常に多く,その活動範囲も比較的狭い」ことを理由として,「現行どおりでもよいと考える」*3との見解もある.業者数の数と活動範囲から同市側が同事務の移譲を要請しているかは,同記事ではその意図を十分に読み取ることができず.今後要確認.
なお,蛇足.同記事では「地方振興局再編の中」とも紹介.同県では2006年に地方振興局の再編を行ったところ*4と記録しているが,また新たな再編を検討されているのだろうか.これまた要確認.