2月中旬に開会予定の2月定例県議会で、県の基本計画の策定や変更の際、県議会の議決を必要とする政策条例が初めて適用される。
 県が、議決対象となる3つの計画を提案するためだ。県の基本計画策定については、これまで県議会は事実上の事後報告の場にとどまっており、今後は監視機能の強化を図る。県が提案するのは、県高齢者保健福祉計画、教育創造プラン、県スポーツ振興基本計画―の3計画案。

同記事では,宮崎県議会において,同県の 「宮崎県行政に係る基本的な計画の議決等に関する条例」*1 第2条第2項の「県行政の各分野において県民生活に密接に関わる政策及び施策の基本的な方向を体系的に定める計画のうち,県行政運営上特に重要なものと議会が認めるもの」として,同条例の附則2に掲示された条例のうち,同記事にある3つの「県行政の運営上,特に重要な計画の策定等」について,同条例第3条に基づき,議会議決が図られる予定であることを紹介.同県の同条例については,同県同議会HPを参照*2
いわゆる地方自治法第96条第2項の運用事例の一つ.同条文に関しては,第29次地方制度調査会において「議会基本条例の制定や,総合計画、自治事務に該当する法定計画を議決事件に追加することなどの手法により,議会における実質的な審議を促進」と「議会審議の活性化」の現状として認識されている.ただ,「「法定受託事務」に係るものについてはその性質に鑑みて本項の事件から除外」されており,「法律又はこれに基づく政令(これらに基づく条例を含む.)においてその旨の定めがある場合に限る」*3とされてきた.同調査会では,「法定受託事務についても自治事務と同様議決事件の議決すべき事件として条例で追加することの追加を認めることが適当」との見解を現在では示しいる.そして,「具体的にどのような議決事件の追加が考えられるのかといった地方側の意見・要望も踏まえて,個別の法律に則してどのような問題があるのか等を議論していく必要」*4との見通しにある模様.ただ,実際に「地方側の意見・要望」が提示されうるのかは見通しが不明瞭な部分も残るようにも考えられる.自治体側から「意見・要望」が示されることがあるのだろうか.要確認.ただ,同記事及び同県HPにもあるように同条例が「政策」条例であるとすれば,議会による政策的な判断として,同条例第5条に基づき,法定受託事務においても議決事項にすることが適当と判断するものについて,「知事等に対し,意見」が示されるようになり,これが各自治体で集積されていき,同調査会に対する「意見・要望」に結びつくと興味深いか.
なお,蛇足.同県議会及び同記事にもある「政策条例」という表現,なかなかどうして,下名個人的にはその意味するものが判然とはしない部分も残る.例えば「政策税制」が,特定の社会経済政策を実現するために,税制を通じた誘因・規制の選択構造を整備する税制のように,条例においても特定の社会経済政策の実現のための条例を通じた誘因・規制の選択構造を提供する条例の総称なのだろうか.例えば,「議会や議員の身分等に関する条例以外の政策的な行政関連条例」*5を「政策条例」とする考え方がある一方(比較的,下名の認識にも近い定義なのかなあとも思われるものの,ただ,同定義内での「政策的な」という文言が意味するものが何なのだろうか),議員が「独自に」*6提出する条例をもって「政策条例」とする考え方もある模様.恐らくではあるが,同県議会の場合には,議員提案条例のことを「政策条例」と整理されているようではある.同概念,自治業界的に一般的な共通認識があるのだろうか.これまた,確認しなければ.

*1:宮崎県HP(県政情報(法規・公報))「宮崎県行政に係る基本的な計画の議決等に関する条例」(平成20年3月26日条例第19号)

*2:宮崎県議会HP(情報公開・県議会広報県議会広報県議会の動き県議会の動きNO.9平成20年4月掲載》)「可決された議案、可決された意見書・決議

*3:松本英昭『新版逐条地方自治法第4次改訂版』(学陽書房,2007年)340頁

新版 逐条地方自治法

新版 逐条地方自治法

*4:内閣府HP(第29次地方制度調査会第3回総会:開催平成20年12月5日)「資料1 「チェック機能の充実」に関する調査審議について」11頁

*5:牧瀬稔『議員が提案する政策条例のポイント』(東京法令出版,2008年)15頁

議員が提案する政策条例のポイント―政策立案の手法を学ぶ

議員が提案する政策条例のポイント―政策立案の手法を学ぶ

*6:兼子仁・北村喜宣・出石稔共編『政策法務事典』(ぎょうせい,2008年)169頁

政策法務事典

政策法務事典