住民に信頼される議会を目指し、塩釜市議会が熱い議論を続けている。先の6月定例会では、議会の権限を拡充する「重要計画議決条例」をスピード可決。逆に議会の存立にかかわる議員定数の削減は、拙速を避けて継続審議とした。議会改革に対する議員の意識には濃淡もあるが、そのことが、かえって活発な話し合いの呼び水になっているようだ。
<根回しなし>
 重要計画議決条例は保守系共産党の議員が、会派の垣根を越えて共同提出。事前の根回しは一切しなかった。これが、議場での質疑応答を通して議会の役割を再確認する効果を生んだ。「基本計画を議決対象にすると執行部による行政運営の自由度が狭まる」「執行部による報告は以前もあり、条例で義務付ける必要はない」「住民の意見を取り入れた基本計画を議会が審議するのは住民無視ではないか」
 「予習」のできていない議員が、素朴な疑問をぶつける。提案者を代表して伊藤博章議員が答弁に立った。「従来は執行部の説明を聞くだけで、あとは完成した冊子が突然、議員の元にぽんと届けられていた。これからは、議会の意思で説明を求め、しっかり審議して議決責任を果たさなければならない」近年、議決権を拡大して議会も自治体経営に責任を持とうという考え方が広がりをみせている。北海道栗山町では、住民から募った意見が基本計画に反映されていない実態が明らかになった。執行部による策定手続きの形骸(けいがい)化を暴いたのは、議会の徹底審議だった。
<住民に諮る>
 塩釜市でも現在、基本構想、基本計画、実施計画で構成する第5次長期総合計画(2011〜20年度)の策定作業が進んでいる。条例に基づいて基本計画は、早ければ9月定例会で審議入りする。
 6月定例会には、定数を現行の21から3減して18にする条例改正案も検討された。提案した議員は「今年3月に議会が実施した住民意識調査でも定数削減を求める意見が多かった」と説明し「削減しなければ住民無視だ」と訴えた。だが、重要計画議決条例の施行で塩釜市議会は今後、審議すべき案件が増大する。「定数の見直しは、議会が本来の役割を果たすためには何人の議員が必要なのか、という議論から始めるべきではないか」と自問する議員もいた。結局、削減案は継続審議となった。佐藤貞夫議長は「議会だけで決めるのもまた住民不在。住民に諮りながら丁寧に議論していきたい」と語る。29日には、議会が現在策定中の議会基本条例について住民の意見を聴く説明会も行われる。この場が住民の声を受け止める最初の機会になりそうだ。
[重要計画議決条例]市の総合計画のうち地方自治法で定められた基本構想に加え、独自に基本計画を議決事項に加える条例。執行部が住民意見を募り策定する各種計画についても議会への報告義務を課し、議会による意見具申を可能にした。千葉県船橋市などに類似の条例がある。

本記事では,塩釜市における「重要計画議決条例」制定の取組を紹介.同条例を拝読させて頂こうと,同市の例規*1を確認させて頂くものの,現在までのところ,未収録の模様.恐らくは,2009年9月2日付同年10月30日付同年2月10日付の各本備忘録にて記録した,地方自治法第96条第2項の運用事例の一つとも整理が出来そう.公開後,要確認.
2008年9月23日付同年11月13日付2009年11月6日付同年3月6日付の各本備忘録にて,断続的に言及してきた,基本構想制度設置に関する地方自治法第2条第4項の改正後の基本構想制度を巡る制度選択の路線.①「積極的」な基本構想・総合計画制度の策定「廃止」路線,②「慣性」による基本構想・総合計画制度の策定「継続」路線,③「積極的」な基本構想・総合計画制度の「改定」路線という,3つの路線選択*2として整理した場合,結果的には基本構想制度の策定継続を選択される②又は③の路線において,策定に伴い,議会議決の「対象」とする路線(②-1,③-1)と「非対象」とする路線(②-2,③-2)の何れかの選択が想定.その際,議会議決の「対象」化路線(②-1,③-1)を選択される個別自治体では,本記事で紹介されている塩釜市のように,更に同路線選択を「法定化」し,「法定上標準」への路線を選択されるか,又は,「事実上標準」*3に止めることになるかは,興味深い観察課題.
現在,衆議院において「閉会中審査」*4にある「地域主権改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案」,「国と地方の協議の場に関する法律案」(地域主権改革関連2法案)及び地方自治法改正案.「秋風とともに再び政治の季節が訪れるか」は予期できないものの,「秋にはほとんど毎年,臨時国会が召集」*5されてきたなかで,2010年7月9日付の朝日新聞では,7月「30日にも」召集することを検討」*6とも報道された,臨時国会における同法案の審議を踏まえつつ,現在,基本構想を策定の検討又は審議を進められつつある個別自治体の基本構想制度への議会議決の「対象」化への路線選択の状況は,要観察.

*1:塩釜市HP「塩竈市例規 (内容現在 平成22年04月01日) 」(常々,疑問なのですが,ウェブ版,加除式版の何れにおいても「例規集」の更新の時期(加除の時期)には,共通性があるものなのでしょうか.)

*2:松井望「総合計画制度の自由度と多様性」『自治体法務Facilitator』Vol.24.2009年10月号,21-22頁

*3:金井利之「総合計画制度の展望−基本構想義務付け制度の廃止を受けて−」『都市問題』第101巻第6号,2010年6月号,78〜89頁

*4:衆議院HP(第174回国会 議案の一覧)「提出番号56地域主権改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案」,「提出番号57国と地方の協議の場に関する法律案,「提出番号58地方自治法の一部を改正する法律案

*5:内田健三現代日本の保守政治』(岩波書店,1989年)188頁

*6:朝日新聞(2010年7月9日付)「参院選、政局にらみ最終攻防 民主内、募る首相への不満