徳島県が毎年、公益法人内外情勢調査会飯泉嘉門知事が講演した内容をまとめた小冊子を広報費名目で多数購入し、県職員に配布していたことが二十七日、分かった。県民や職員の一部から「職員が知事の考えを知るためにわざわざ外部団体が発行する冊子を買う必要があるのか」と疑問の声が上がっている。
 県によると、知事は毎年、内外情勢調査会徳島支部の五月例会で講演。県政の課題や今後の方向性などを語り、調査会が講演録として小冊子(A5判)を発行している。県は、小冊子を県政全般を理解する資料として職員に配布。市町村や各種会議などを通じて県民にも無料で配っている。
 飯泉知事の就任以前からの慣行で、最近五年間では二〇〇四年度が六千五百部、〇五年度が八千部を購入。〇六年度は百七十九万円余で一万千七百部を購入した。その後は厳しい財政事情を理由に〇七年度五千部、〇八年度千二百部に減らした。一冊当たりの価格はページ数などによって異なり、〇八年度の購入額は三十万八千円。県は、約五百部を課長級以上の幹部職員や各部局に配布したという。公費での購入理由について、秘書課は「知事の県政全般に対する考えがまとまった貴重な資料。財政状況を考え冊数を大幅に減らしてきたが、さらに必要冊数については検討したい」と説明。職員の間には「県政を進める上で貴重な資料になる」との声もある。
 しかし、県政の指針「オンリーワン徳島行動計画」の内容をまとめた県発行の冊子が作成され、小冊子と同様に職員や県民に無料配布されている。職員からは「定例会見や県議会での所信表明などで知事の考えを知る機会はある」と冷ややかな声も聞かれ、小冊子購入には庁内で賛否両論がある。内外情勢調査会時事通信社の関連団体。全国に支部があり、各界の著名人などを招いた講演会を毎月開いている。調査会によると、他の都道府県知事も講演を行い、講演録の小冊子を公費で購入して職員に配っているケースは多いという。

同記事では,徳島県において,同県知事の講演を収めた冊子を,県職員に配付する取り組みを紹介.
「幹部職員の傾向の一つは,現職知事へのコミットメントの強さにもよりますが,ちょっとした知事の発言に敏感に反応することです.ときには,真意を忖度して対応を考えたりします.その意味では,知事たる者が思いつきを公言するのは困りものです.しかし,知事の言及が本気だとすれば,すぐに対応しなければ怒られますから,対策が講じられます」*1という,大森彌先生による知事と県庁職員(「県庁官僚制」)の関係性の観察結果を踏まえつつ,同記事内で記載されている「他の都道府県知事も講演を行い、講演録の小冊子を公費で購入して職員に配っているケースは多い」という,庁内外部機関が公刊した冊子というメディアを通じた,庁内の「情報同化」*2の現況を考えてみると,「情報構造の分権性/集権性」と「人事管理の集権性/分権性」という「双対性原理」*3において明示された「J企業」の情報構造の特徴である「非ヒエラルキー的な情報構造」(61頁)は,いわば,「J自治体」の情報構造においても共有されるがゆえの取り組みともいえそうか.考えさせられる.

*1:大森彌「知事と外部助言者」『年報行政研究41 橋本行革の検証』(ぎょうせい,2006年)94頁

橋本行革の検証 (年報行政研究)

橋本行革の検証 (年報行政研究)

*2:青木昌彦『比較制度分析に向けて』(NTT出版,2003年)113頁

比較制度分析に向けて 新装版 (叢書≪制度を考える≫)

比較制度分析に向けて 新装版 (叢書≪制度を考える≫)

*3:青木昌彦『日本経済の制度分析』(筑摩書房,1992年)61頁