柳村純一前滝沢村長(58)が兵庫県香美(かみ)町の副町長に就任することが9日、決まった。村長時代の経営品質向上などの取り組みが評価され、財政再建を目指す同町から白羽の矢が立った。
 同町は長瀬幸夫町長が就任した5月から副町長が不在。9日に開かれた町議会の9月定例会で副町長人事の議案が可決し、柳村氏が就任することになった。長瀬町長は、柳村氏が行ってきた役場の組織改革や経営品質向上などの取り組みを知って交流を深めながら、副町長就任を打診。柳村氏も「これまでの行政経験を生かせるなら」と快諾した。

同記事では,香美町における副町長就任について紹介.同職の就任者は,前滝沢村町長.同内容については,2009年9月9日付の神戸新聞でも報道*1.本年「4月,同町であった講演会に講師として招いたのを機に親交が深まり,行革の手腕を高く評価し,副町長就任を要請」が就任までの経緯の模様.2009年9月10日付の朝日新聞の報道によると,「議会では「香美町と関係の薄い人が行政を担えるのか」など」の意見が示されたなかで,「採決では8対6(無効1)で可決」*2されたとある.2009年9月10日付の日本海新聞の表現を参照させていただけば,「大物元村長がやってくる」*3取組.
副首長を「自治体ナンバー2」と捉えた場合,田村秀先生による日英米における「自治体ナンバー2」に関する研究結果を拝読すると,同職への「就任前に政治職についているケースは,日本の場合,市議会議員から助役,あるいは市町村長から副知事ということが一部では行われている」との観察結果が示されている.同村のように,合併町村長の同職就任という事例を除くと,他の地域における首長職経験者が同職に就任する事例というのは,他の自治体でも確認することができるのだろうか,要確認.興味深い.
2009年9月9日付の本備忘録でも触れた,2008年12月28日付以来の断続的観察課題,「自治体人事管理の「半開き(semi-open system)化仮説」の観察を更に継続する場合,各種職に対する庁内外部からの登用制度は,中心的な観察対象の制度となりそう(本来であれば,庁内からの登用も含めてその対象とはなりそうですが).同制度の場合,ひとまずは常勤職を対象とすると,同職の就任において議会同意を要する職であるか否かという視角と,同職が総括的・概括的に職務が分掌されているのか,又は,特定・限定的な職務として分掌されているのかという視角,更には,同職の任期が予め規定されているか否かという視角から,類型化が可能そう.これらの視角によると,つまり,「常勤・同意職・総括系・任期付」,「常勤・同意職・総括系・任期無」,「常勤・同意職・専門系・任期付」,「常勤・同意職・専門系・任期無」,「常勤・非同意職・総括系・任期付」,「常勤・非同意職・総括系・任期無」,「常勤・非同意職・専門系・任期付」,「常勤・非同意職・専門系・任期無」の8類型に分類可能かとも考えられる.
例えば,2009年6月3日付同年7月24日付同年8月22日付の各本備忘録にて紹介した豊岡市における副市長職候補者の公募事例,2009年8月8日付2009年9月9日付の両本備忘録にて紹介した瀬戸内市による副市長候補者の公募事例,そして,同町の事例において庁内外部から登用された,「副首長」という職に限って考えてみると,まずは,副首長という職が「市支配人的運用」*4の蓋然性が内包する職であることからすれば,「常勤・同意職・総括系・任期付」として,その活動範囲が非常に広範になることも想定される.一方で,下名の観察結果からは,あくまで副市長の事例(そして,特に,同職を複数置く場合)を対象としているが,「市長の「スタッフ職であることが前提」となるが」「実質的には,いわば,各局の「ライン長」的な性格も少なからず持つ部分もある」*5ともいえ,その活動範囲は専門的(一方では,(特に「二重権力構造」*6を迂回するためにも)限定的)になることもあり,同職の公募要件及び就任後の分掌次第では,「常勤・同意職・専門系・任期付」とも位置付けることができなくもない.同町の場合,単独の副町長となることから総括系・概括的な所掌も想定される一方で,「役場の組織改革や経営品質向上」のための内部管理的業務の専門系を想定されているようにも整理できなくもない.これまた要確認.
これらの類型に基づく機能と人事管理への影響については,観察事例を増やしつつ,要観察.

*1:神戸新聞(2009年9月9日付)「香美町副町長に柳村・元岩手県滝沢村村長が就任

*2:朝日新聞(2009年9月10日付)「副町長に元岩手・滝沢村長

*3:日本海新聞(2009年9月10日付)「大物元村長がやってくる 香美町副町長に柳村氏就任へ

*4:金井利之「市支配人制度の導入の可能性」穂坂邦夫・監修『シティマネージャー制度論』(埼玉新聞社,2008年)128頁

シティマネージャー制度論―市町村長を廃止する

シティマネージャー制度論―市町村長を廃止する

*5:松井望「自治体における中核的機構の管理と統御に関する観察ノート」『都市政策研究』(首都大学東京都市政策コース発行),Vol.3,2009年,160頁

*6:出雲明子「戦後日本の政治任用 制度設計と政治過程」『季刊 行政管理研究』125号,2009年3月号,4頁(同論文,やはり良い論文ですね)