村長派と反村長派の議会対立が続く忍野村の天野康則村長は13日、9日の臨時村議会が“流会”となり廃案になった、副村長と監査委員人事など4案件を専決処分した。天野村長は「村民生活を第一に考えて政治判断した」と説明。これに対し、反村長派は「議会の同意がない人事は認められない。前代未聞の行為」と猛反発し、両者の対立が深まっている。
 村によると、専決処分したのは人事案件や、新型インフルエンザのワクチン接種補助(618万9千円)を含む一般会計補正予算など4案件。人事案件は、副村長に大森敏正氏(64)=同村忍草=、監査委員に天野一光氏(60)=同=を選任する同意案件で、就任は13日付。天野村長は「一部の議員が反対のための反対をしている。的確な人事であり、村民の理解は得られると思う」と強調。これに対し、反村長派村議は「許されることではなく、暴挙だ。対応を考えたい」としていて、対立により議会や行政運営に支障が出る可能性がある。
 県市町村課は「副村長などの人事は議会の同意案件。地方自治法で人事案件の専決処分は禁止されてはいないが、なじまない」という。人事案件をめぐっては、天野村長が9日の臨時村議会に提案しようとしたが、村長派の渡辺理男議長が「不同意の可能性が高い」として本会議を開かず廃案となっていた。

同記事では,忍野村における副村長等の就任について紹介.同村における同職2009年11月10日付けの同紙では,先に,その議員構成を鑑みて「不在になっている副村長と監査委員の人事」に関して,「9日の臨時村議会に提案しようとした」ものの「渡辺理男議長は「不同意の可能性が高い」として本会議を開かず“流会”」*1に至った背景も報道.なるほど.
その就任に際しては,地方自治法第162条に基づき,首長から提出議案に対して,その「諾否を決する」*2議会同意案件とされる副首長制度.同村の場合,専決処分を規定する同法第179条第1項にいう「議会が成立しないとき」という要件は満たされているようではあるものの,同村長は「議会において議決すべき事件を議決しないとき」の要件を満たすものと判断されたのだろうか,同案件を専決処分により選任.同案件に対する専決処分に関しては,「議会の同意がない副知事又は副市町村長の選任行為は,法第百七十九条に基づく専決処分による場合の他は,無効のものと解する」(上掲・松本2009:522)という,いわゆる「積極」*3説がある一方で,「副知事・助役の職務の重要性,議会の同意が要件とされた趣旨等から判断すると,専決処分を行うことは避けるべき」という「消極」(68頁)説の両説が示されている.ただ,いずれも司法的判断等に基づく見解というよりも,「適切性の論理(logic of appropriateness)」*4を越えるものではない模様.
下名もまた,2008年4月20日付の本備忘録において言及したように,同職に対する議会同意制度の必要性は,少なからず理解は出来るものの,やはり,同職の性格上,事前統制よりも,2008年6月15日付及び2009年6月3日付の本備忘録でも言及し,2008年6月15日付の本備忘録においても考えてみたように,同職に対する解職について,「業績投票」に基づく「事後統制」へと転換することが,「自由度の拡大路線」*5の思潮においても,「適切」ではないかと考えるが,どうだろうか.

*1:山梨日日新聞(2009年11月10日付)「反村長派の旅行中に議会招集 忍野 連絡で欧州から急きょ帰国 本会議開かず「流会」に

*2:松本英昭『新版 逐条地方自治法第5次改訂版』(学陽書房,2009年)521頁

新版 逐条地方自治法

新版 逐条地方自治法

*3:和田裕生「知事,市町村長の補助機関」高部正男・編著『最新地方自治法講座6 執行機関』(ぎょうせい,2003年)68頁

執行機関 (最新地方自治法講座)

執行機関 (最新地方自治法講座)

*4:山田高敬・大屋根聡『グローバル社会の国際関係論』(有斐閣,2006年)82頁

グローバル社会の国際関係論 (有斐閣コンパクト)

グローバル社会の国際関係論 (有斐閣コンパクト)

飯田敬輔『国際政治経済』(東京大学出版会,2007年)71頁
国際政治経済 (シリーズ国際関係論)

国際政治経済 (シリーズ国際関係論)

*5:西尾勝「四分五裂する地方分権改革の渦中にあって考える」『分権改革の新展開』(ぎょうせい,2008年)3頁.

年報行政研究43 分権改革の新展開

年報行政研究43 分権改革の新展開