基山町の長忠生さんは、94歳になった今も「基山町史(上・下巻)」の編さん委員として執筆活動に励む。12月に刊行される町史では近世を1人で担当、石碑や古文書を求めて町内を歩き回り、2年半かけて400字詰め原稿用紙300枚分を書き上げた。「自分で歴史を読み解いて記録に残したい」と、郷土史への熱意はとどまることを知らない。
 長さんは1915(大正4)年6月生まれ。長年教育現場に携わり、退職後は生まれ育った「基肄養父(きやぶ)」(現在の基山町鳥栖市東部)の歴史に関心を寄せ、多くの著書を発表。昭和40年代の鳥栖市誌編さんにも名を連ねた。
 町史編さん作業では昔の庄屋に残っていた文書を何度も開いた。わずか数行のために膨大な資料をめくることもあるが、「古い資料を見ることが生きがい」と一言。思いのこもった原稿は予定分量を大幅にオーバー。「これだけは知ってほしいと思って書いたら枚数が足りなくて」と、屈託のない笑顔を見せる。
 「しゃべりだしたら止まらない」と自他ともに認めるおしゃべり好き。編さん室でも、職員と冗談を言い合い、笑いが絶えない。「常に最後の仕事と思って向き合う」という郷土史家と、誰からも愛される”名物おじいさん”の二つの顔を持つ。「家族や周りの支えがあるからこそ」と謙遜(けんそん)しながらも、その表情には充実感に満ちている。
【写真】94歳の今も基山町史の編さんに携わり、原稿用紙300枚分の原稿を執筆した長忠生さん=基山町の町史編さん室

同記事では,基山町において,町史編さん・執筆の取組状況を紹介.
2009年9月20日付で総務省により整理された,わが国の65歳以上の高齢者の状況によると「総人口に占める割合は22.7%」であり,「前年(2818万人,22.1%)」比では「80万人,0.6ポイント増」にあり.年齢構成別では,「70歳以上人口は2060万人(総人口の16.1%)」と前年比では「44万人,0.3ポイント増」,「75歳以上人口は1370万人(同10.7%)」と前年比では「50万人,0.4ポイント増」,そして,「80歳以上人口は789万人(同6.2%)」と前年比から「39万人,0.3ポイント増」*1の状況にある.連休明けに求められている,2本の小論提出の締め切りにさえ青息吐息な状況にある下名にとっては,同記事で紹介されている,「94歳」の編さん委員さんによる,その執筆への熱意と成果に善望.
今村都南雄先生による「議会史という仕事」という「随想」を拝読すると,議会史の記述の困難さと対比として,市史編さんに関する記述もある.市史においては,まずは「主だった施策や事業の展開を最初に抑えることが求められる」*2として,議会史が「扱う資料の多さ」「執筆分量の多さ」(202頁)がその特徴とすれば,「市政概要とか首長による毎年の施政方針演説,そこに登場する施策・事業を中心に,所管部課に残ってい文書を集めて経緯を整理していけば,大概の見当をつけることができる」(201頁)と,その手順が示されている.その成果のみを拝読する下名にとっては,その生成過程を理解することができ,参考となる随想.ただ,市史(町史)においても,その執筆が「石碑や古文書」が資料になる期間にまで遡ることになると,同記事にもあるように,一重に,編さん委員による資料発掘に依拠することが多くなる模様.その熱意には,ただただ,驚き.

*1:総務省HP(統計局:統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-)「I 高齢者の人口

*2:今村都南雄『わたしの行政学研究』(公人社,2009年),200頁

わたしの行政学研究 (自治総研ブックス)

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