鳥取県は16日、2度目の新政権予算対応等戦略会議を県庁で開き、2010年度当初予算の編成作業を始めた。国の10年度予算の行方が見通せない中で、不要、非効率な業務を洗い出す、県版「行政刷新会議」とも言うべき「事業棚卸しプロジェクトチーム(PT)」を立ち上げ、業務重複や費用対効果などを総点検し、無駄の削減に努める。
 同PTは部局を横断し、若手も交え30人程度で構成。対象事業を抽出し、今月下旬から約2週間、各部局の担当者へのヒアリングなどを通じ、事業を評価する。県議や外部有識者でつくる「地域主権研究会」に報告、相談しながら、12月中旬には最終報告をまとめる。事業の廃止、縮小だけでなく、市町村への移管、民間委託などの「仕分け」も検討する。
 国の10年度予算に対しては、国土交通省の道路予算の大幅削減を受け、山陰道などの完成遅れへの懸念が指摘されているが、補正予算見直しについて平井伸治知事は「予想していたほど大きな影響はなかったようだ」と話した。

同記事では,鳥取県において予算編成作業を開始したことを紹介.新政権予算対応等戦略会議,事業棚卸しプロジェクトチーム,地域主権研究会の役割分担については,2009年10月15日付の同県知事定例記者会見を参照*1
同会見を拝読すると,「1月ぐらいかけて短期間で事業の棚卸」を行う試みとある.同県では,「課の中の見直しが従来のサマーレビュー」がおこなわれており,ただ「サマーレビュー方式」では,「夏場に各部局の担当部局」と「いわば査定部局に当たるようなところで意見交換をして,事業見直しのタマ出しのようなこと」を行ってきたものの,「どうしても,対立的になりますので,思いが出てこない面もあるのではないか」との思いが示されている.そこで,「課を飛び越えた感じで第三者的にも見ていこうという」として,「事業を点検していこうという試み」がなされることになる.そのために,「いわゆる事業仕分けと呼ばれるようになった手法」を「まず,県庁内の人材でやってみると同時に」,「今度立ち上げようと思ってい」る「地域主権の研究会のメンバーにもその状況をスーパーバイズしてもらう形で外部の目も入れながら,事業の棚卸を緊急にやっていく」という.
その「県庁内の人材」には,「現場職員の方が,無理や無駄に対する意識が強い」「管理職」では「前年踏襲的な感じになったり,それから,実際自分で担当してませんので,これはいらんなあという問題意識はやや希薄」になりがちとして,「若手とか,あるいは我々の組織担当者だとか、財政担当者だとか,企画担当者」から構成される.もう一方の「スーパーバイズ」役をはたすのは「地域主権研究会」となる.同研究会自体は,「恒久的な制度として,国から地方出先機関全部都道府県に来るという前提になった場合、それをどうやって今後,国・県・市町村で,実際,効率的な,自治的な制度を作っていくか、これを勉強しようという組織」ではあるものの,「事業棚卸作業」においても,「オブザーバーみたいなかたちで,その緊急プロジェクトチームの事業を,アドバイスしていただく,コーディネートしていただこう」との方針にあるという.
同日付の毎日新聞による報道*2では,「地域主権研究会は来週にも第1回の会議が開かれる予定」であり,「PT」については「今後,月2,3回のペース」で開催され,「テーマによっては市町村の担当者らにも参加を呼び掛ける」方針にあるという.
「財政部局が,予算編成作業を通じて永年なじみかつ培ってきた漸変主義的(incremental)意思決定ルールと,それに基づく意思〈調整〉技術が,政治環境の偶発的な変化による撹乱作用から行政を守るのにもっとも有効な手段」*3とも解されてきた「機関哲学」*4についても変化が見られつつあるとも整理ができそう.2008年4月2日及び同年10月25日での各本備忘録でも取り上げたように,自治体内における「財政部(局)統制」において,どのような影響があるのだろうか.要経過観察.

*1:鳥取県HP(知事のページ鳥取県知事記者会見録平成21年度知事記者会見録)「知事定例記者会見(2009年10月15日)

*2:毎日新聞(2009年10月16日付)「県:地域主権検討PT発足 新政権の地域主権、現場の声を国に提言へ/鳥取

*3:小島昭自治体の予算編成』(学陽書房1984年)170頁

*4:ピーター・セルフ『行政官の役割』(成文堂,1981年)99頁

行政官の役割―比較行政学的アプローチ (1981年)

行政官の役割―比較行政学的アプローチ (1981年)