鳥取県は、高齢者や障害者が生活支援を受けながら住み慣れた地域で暮らし続けることができる共同住宅「地域コミュニティーホーム」を、新年度から県内で試験的に導入する方向で検討に入った。経済的に有料老人ホームや高齢者向け住宅への入所が難しい人でも利用できるよう安価な利用料に抑え、地域での人間関係も維持できる新しい高齢者住宅の在り方を模索する。全国的にも前例はほとんどなく、事業が軌道に乗れば“鳥取発”の新たな介護モデルとして注目を集めそうだ。
 県長寿社会課によると、鳥取県は2010年度の人口に占める75歳以上の高齢者の割合が全国で6位と高齢化が進行しており、介護保険の利用額も全国で2位。一方で年金額は、全国平均の月額8万9326円(09年度)に比べて同8万4165円(同)と低水準。特に山間部では国民年金受給者が多く、都市部より年金額が低い傾向にあるという。
9割いまの地域
 鳥取大学が八頭町の独居高齢者264人を対象に実施した調査によると、約9割が「いま住んでいる地域に住み続けたい」と回答した。高齢者が介護保険施設に入所すると、これまでに築いた人間関係が途切れてしまうことがあるため、いかに地域で暮らし続け、かつ低価格の生活支援サービスを提供できるかが県や市町村の命題となっている。地域コミュニティーホームは、民家や公共施設などを改修した地域の共同住宅に軽度の要介護の高齢者など5〜6人が入所。グループリビングや共用スペースで地元の仲間と交流でき、介護保険を利用した訪問介護なども可能。掃除や食事の準備などの生活支援は事業者ではなく住民団体が担当し、できるだけ地域が地元の高齢者の生活を支える仕組みを目指す。利用料は、月額6万円程度が想定されている。
居場所づくりも
 また県は、比較的元気な高齢者を対象とした介護予防対策として、地域の住民団体が、高齢者に配食などのサービスを提供する場所を確保する「居場所づくり事業」も併せて検討中。自宅に閉じこもりがちになる高齢者に外出を促す効果も期待している。地域コミュニティーホーム事業は3年間、居場所づくり事業は2年間、県と市町村が運営費を支援し、それぞれ3カ所ずつ、事業をモデル実施する地域を選定する計画。県や市町村の12年度当初予算案が各議会で可決された後に、市町村を通じて事業を行う住民団体を公募する予定だ。県長寿社会課の日野力課長は「35年には県内の75歳以上の人口は約3割増加する見込み。今回の事業は、いまから地域における高齢者介護や生活支援の在り方を考えておきたいという発想で生まれた」と話している。

本記事では,鳥取県における「地域コミュニティーホーム」の取組方針を紹介.
同取組の正式名称は「鳥取型地域生活支援システムモデル事業」*1.同県の「平成24年度当初予算」の一般事業として提案.同事業の概要は,同県の「予算編成過程の公開」の取組を通じて,把握することができる(本当に,便利な時代になりましたね).
同事業の提案の背景としては,同県では,2005年度では「34,731世帯」であった「世帯員が65歳以上のみの一般世帯数」が,2010年度には「38,917世帯」と増加傾向がある.これらの世帯では,「年金額が低く,有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅の負担に耐えられない方が多い」こと,そして,「多くの高齢者が地域に住み続けたいと願っている」との現状認識にあり,そこで,「地域で暮らし続けたいと考える高齢者、障がい者など」に対して,「介護保険施設,病院以外の選択肢を準備」をして「それまで暮らしていた地域」で「家賃,光熱費,食事代,見守りサービス費を含め,可能な限り安価な住居を準備する」*2同事業が提案.
同事業の「実施主体」とその手法は,「市町村が適当と認めた地域住民が参加する法人又は団体」とある,「間接補助」方式となる.ただ,同事業は,まずは同「県内3ヶ所」で「3年程度」の「モデル事業として実施」される.その「補助額」は,「11,250千円」.内訳は,「運営費助成」が「1ヶ所当たり事業費」を「2,000千円」,「施設改修費助成」が「1ヶ所当たり事業費」を「3,000千円」を計上.また,いずれの「負担割合」も「県」が「3/4」,事業を実施する「市町村」が「1/4」とされている.そして,同「モデル事業の成果を検証の上」で,「事業終了後の展開」として,「全県での実施を目指す」*3ことも想定されている.
「高齢者が住宅難」*4であり,今後,なり得る蓋然性が更に高くなることも考えるなかで,方や,その住まいに関しては「価格」と「立地」*5に訴求されることも観察される.同事業の「可能な限り家賃を低く抑える」ことが「今後の取組み」*6として位置付けられているなかで,具体的にどの程度家賃が抑えられることになるのだろうか,要観察.

*1:鳥取県HP(予算編成過程の公開平成24年度予算福祉保健部)「鳥取型地域生活支援システムモデル事業(地域コミュニティホーム事業)

*2:前傾注1・鳥取県鳥取型地域生活支援システムモデル事業(地域コミュニティホーム事業))

*3:前傾注1・鳥取県鳥取型地域生活支援システムモデル事業(地域コミュニティホーム事業))

*4:上野千鶴子『ケアの社会学』(太田出版,2011年)212頁

ケアの社会学――当事者主権の福祉社会へ

ケアの社会学――当事者主権の福祉社会へ

*5: 山本理顕『地域社会圏主義』(INAX出版,2012年)130頁

地域社会圏主義

地域社会圏主義

*6:前傾注1・鳥取県鳥取型地域生活支援システムモデル事業(地域コミュニティホーム事業))