静岡市は、お茶の伝統や文化を守り、関連産業を振興することを目的に4月に施行された「市めざせ茶どころ日本一条例」に基づき、10年後の市内の生産規模の数値目標などを盛り込んだ「市茶どころ日本一計画」案を公表した。「世界中の誰もがあこがれるお茶のまち」を目指すとしており、市は25日までパブリックコメント(意見公募)を実施する。
 計画案では、安らぎと潤いをもたらす独自の「茶の生活文化」を築くため、市内の5割強の小学校で実施しているお茶の入れ方教室を全小学校に拡大するほか、1世帯の年間の緑茶(リーフ茶)購入量を現状より7%増やして2キロとする――との10年後の数値目標を掲げた。また、茶業を足腰の強い産業にするため、作業道や土地基盤が整備され景観も優れている優良茶園を1000ヘクタール確保し、お茶作りのリーダー(茶農家85人、茶商25人)も育成する。さらに、JR静岡駅北口の地下広場にある観光案内所の喫茶コーナーの利用者数を現在より約3割増やして年間2万人とし、国内外に「お茶のまち静岡市」をPRする。
 静岡市の茶の栽培面積や産出額はかつては日本一だったが、近年はいずれも大幅に減少。農業従事者に占める65歳以上の高齢者の割合も55%以上と高齢化も進んでおり、茶業の魅力や可能性を高め、担い手を確保することが課題となっている。計画案は、市農業振興課のホームページ(http://www.city.shizuoka.jp/deps/nogyosinko/)で見ることができるほか、区役所でも配布している。問い合わせは同課(054・354・2087)へ。

同記事では,静岡市において取りまとめた「市茶どころ日本一計画案」へのパブリックコメントの実施状況を紹介.同計画案及びパブコメの状況に関しては,同市HPを参照*1
同計画の所管部門が,同市農業振興課であるとすれば,一見すると「総合計画と対峙する存在として描かれていた」「各種の事業計画や長期計画」としての「部門別計画」*2としての分類できそうではあるものの,同骨子案を拝読させていただくと,「お茶」という政策対象を通じて,「既存の「所管体系」を越える新たな「政策体系」を構築しようとする」「基本計画」*3として,「一定の政策分野の課題を体系化して整理し,長期的な活動目標を掲げる」「政策分野別基本計画」*4との分類が適合しそうな計画.加えて,その内容的は,「主体の拡大,多様化,主体間の相互作用,相互作用の様態,プロセスの多様化・変化という要素」をも内包しており「ガバナンスの計画」*5としての分類も適合できそう計画.
打越綾子先生による「政策分野別基本計画」の「制度的変容」の形態の観点から,同計画骨子案を拝読すると,同記事にも紹介されているように,同市において2008年12月に制定された「静岡市めざせ茶どころ日本一条例」に基づく計画であるため,「条例計画」*6ともなる.同市の同条例についても,同市HPを参照*7.同条例前文では,「静岡のお茶を取り巻く環境は,非常に厳しいもの」とあり,「危機感を強め」*8されていることから策定された模様.同条例第7条第1項では,「茶どころ日本一施策を総合的かつ計画的に推進するため,市の総合計画との整合性を図りながら静岡市茶どころ日本一計画を策定」することが明記.同規定に基づき,今回策定された同計画骨子案を拝読すると,「「静岡市総合計画」との整合性を図り,次の三つから構成する計画」*9と「基本構想」「基本計画」「実施計画」の三層構造から構成された計画案であることが分かる.
各々の計画期間は,第二層目の「基本計画」では「10 年スパンの基本的な考え方で5年ごとに見直し」と10年単位,第三層目の「実施計画」では「3年毎の具体的な行動計画で毎年度見直し」と3年単位の毎年ローリングとあり,計画環境への情況対応を想定されている模様.一方で,第一層目である「基本構想」の計画期間は,「概ね100 年後(2110年)」と超長期の計画期間が明記されており,同政策分野における同市の揺るぎない方針がある様子を窺える.興味深い.
ただ,同計画の根拠条例にも記載されている同計画との整合性を求めている「市の総合計画」のうち,現行の「基本構想」の計画期間に関しては,「「平成16年10月12日議決」による「概ね平成27年(西暦2015年)における本市をとりまく地域社会の将来像とそれを実現するための基本的な政策大綱」*10として位置づけられていることからすれば,「政策分野別基本計画」と「総合計画」間での包摂関係を考えてみると興味深い課題.要経過観察.

*1:静岡市HP(農業振興課)「「静岡市茶どころ日本一計画骨子案」に対する意見を募集します」及び「パブリックコメント資料 静岡市茶どころ日本一計画骨子案」(平成21年11月,静岡市) 

*2:打越綾子『自治体における企画と調整』(日本評論社,2004年)18頁

自治体における企画と調整―事業部局と政策分野別基本計画

自治体における企画と調整―事業部局と政策分野別基本計画

*3:前掲注3・打越綾子2004年:39頁

*4:前掲注3・打越綾子2004年:11頁

*5:荒見玲子「ガバナンスにおける計画 −市町村地域福祉計画を事例に」『年報行政研究44 変貌する行政』(ぎょうせい,2009年)142頁

変貌する行政―公共サービス・公務員・行政文書 (年報行政研究)

変貌する行政―公共サービス・公務員・行政文書 (年報行政研究)

*6:前掲注3・打越綾子2004年:31頁

*7:静岡市HP(農業振興課静岡市めざせ茶どころ日本一条例について)「静岡市めざせ茶どころ日本一条例」(平成20年12月12日,条例第160号)

*8:永嶺超輝『47都道府県これマジ!?条例集』(幻冬舎,2009年)114頁

47都道府県これマジ!?条例集 (幻冬舎新書)

47都道府県これマジ!?条例集 (幻冬舎新書)

*9:前掲注1・静岡市2009年:2頁

*10:静岡市HP(経営企画課総合計画第1回懇話会(開催日:平成21年5月28日))「資料1 第2次総合計画策定に関する基本方針」1頁