中井洽国家公安委員長は12日の閣議後の記者会見で、政令指定都市に置かれている「市警察部」について、道府県警に吸収する形で全廃する案を国家公安委員会警察庁で検討する方針を明らかにした。市警察部は警察法に基づいて現在、全国14道府県の18市に置かれ、多くで部長は警察本部の警務部長らが兼務している。主業務は警察署との連絡調整にとどまるケースも少なくない。

本記事では,国家公安委員会において,政令指定都市に設置されている,いわゆる「市警察部」制度の廃止を検討する方針であることを紹介.同検討方針の確認のために,同委員会HP*1を拝見するものの,2009年12月25日の記者会見要旨の公開で止まっており,現在までには把握できず.残念.
昭和「30年6月30日」に「五大市の自治体警察」が「廃止されてその事務は府県警察に移管され」たことで,「新たに都道府県警察一本で構成」*2されている警察制度.同制度に対しては「集権型と分権型とをうまくミックス」*3した制度とも評されることもある.岡山市相模原市政令指定都市移行に関する報道を触れた,2009年3月6日付同年10月24日付の各本備忘録内でも言及した「市警察部」制度.同制度に対しては「実際にはこの制度は殆ど動いておりません」*4との観察結果が示される一方,「コミュニティ・ポリシィング」の観点から「この制度を手直しして中核市等にもひろげ,住民に身近なところで処理できる事案はいちいち県の公安委員会まで上げなくてもそこで処理できるような工夫をすべきではないか」との「警察の分権化」*5との制度提案も示されたこともある.また,2009年5月7日付の本備忘録でも触れたように「警察権限の分権論」にも幾つかの議論も蓄積されている.
更に,2009年2月1日付の本備忘録にて取り上げた,横浜市に設置された大都市制度検討委員会が取りまとめた『新たな大都市制度創設の提案』では,「将来のあるべき大都市像」としてではあるものの,「大都市経営のための広範で包括的な事務権限」において「交通規制や生活安全(防犯)など,これまで議論がされてこなかった警察事務の分権化を含め」「大都市が広範で包括的な事務権限を持つべき」*6との提案が示されている.また,同提案では,より具体的に「大都市が担うべき事務権限と改革提案(例)」として,「犯罪捜査,市内警備,地域防犯,風俗営業規制,少年非行の防止」に関しては,大都市が所掌し,「市警の設置又は警察の分権化」という「改革提案例」も示されている.
本記事において報道された「市警察部」の「全廃」の趣旨は現在のところ,本記事のみの情報のため,判然とはしないもの,今後の同制度の廃止に向けた検討状況は,要経過観察.

*1:国家公安委員会HP「平成21年度国家公安委員会委員長記者会見

*2:財団法人地方財務協会『地方自治百年史第2巻』(1993年)578〜579頁

*3:成田頼明『分権改革の法システム』(良書普及会,2001年)393頁

分権改革の法システム―著作集

分権改革の法システム―著作集

*4:前掲注3・成田頼明2001年:394頁

*5:前掲注3・成田頼明2001年:394頁

*6:横浜市HP(都市経営局:[横浜市大都市制度検討委員会http://www.city.yokohama.jp/me/keiei/chousakouiki/bunken/kentoiinkai/top.html#hokoku:title=報告書])『新たな大都市制度創設の提案 最終報告』(横浜市大都市制度検討委員会,平成21年1月)10頁