「地元で愛される食材、料理で弘前名物の駅弁を」。観光都市でありながら、これまで代表的な駅弁が無かった弘前市。観光客の“地元食ブーム”に着目し、津軽地域で食べられている料理を「津軽弁」という名の弁当として売り出そうという試みが始まった。関係者が3日、弘前市立観光館でプロジェクトの実行委員会を設立。今後コンセプトに合った弁当を公募し、市民参加の試食会を経て、3月下旬には第1弾を認定し、JR弘前駅で試験販売を行っていく。
 弘前市内には専門の駅弁業者がなく、地元名物の駅弁がないと観光客から指摘されることも多い。一方で津軽料理遺産認定・普及委員会と地元仕出し店が昨年共同で企画・開発した津軽料理遺産弁当「ばっちゃ御膳(ごぜん)」が好評を得るなど、観光客や市民の駅弁へのニーズは高いものがある。また今年は東北新幹線全線開業を迎えるため、特に駅弁の需要は高まると思われる。
 「駅弁・空弁(そらべん)・津軽弁プロジェクト」と名付けた事業は弘前市が今年度予算化。観光や交通、飲食業関係者ら21団体でつくる実行委員会が3日設立され、初会合を行った。会議では津軽弁のコンセプトとして、津軽料理遺産弁当のような郷土・伝統料理を生かした「過去」、地元の人間が食べている普段ご飯の「現在」、地元食材100%のこだわり創作弁当の「未来」―という三つのパターンで弁当開発を行っていくことを申し合わせた。また弁当は一般から公募したものを書類審査や試食品評会を経て実行委が認定。初回は時間的な制約から調理・販売資格を持つ飲食店や仕出し店などを中心に募集するものの、将来的には広く市民からも提案してもらう。募集は今月下旬から行い、3月下旬に試食会を開いて第1弾を決定。認定された弁当は4月上旬からJR弘前駅自由通路で試験的に販売する。
 プロジェクト委員長の石川善朗弘前大学教育学部教授は「方言が付いた弁当というのは全国を探しても例がない。夢は例えばめんたいこ並みの知名度になることだが、とにかく一歩を踏み出したので頑張りたい」と話した

本記事では,弘前市における「津軽弁」普及の取組を紹介.寝ぼけ頭で,同記事のリードを斜め読み.「津軽弁という「方言」の普及とは,どのように行われるのだろうか,興味深いなあ.え,「弘前名物」?」と思いつつ,同記事を確認すると,2010年2月4日付の東奥新報による報道にもあるように,「方言の「弁」と弁当の「弁」に引っかけ」*1たお弁当普及の取組とのこと.これはこれで興味深い(か).本記事でも紹介されているように,同市における「新幹線開業対策事業」*2の一環として本年度予算化された模様.
余程,定番のお弁当でもない限り,実際に手に取り,その蓋をあけ,箸をいれるまでは,「情報不完備と非対称(informational incompleteness and asymmetries)」*3の下にあるお弁当を,まずは親しみのある方言を通じて,手に取るところからの普及を試みる取組.本記事で紹介されているように,これまでに「全国を探しても例がない」かどうかは,下名もまた確認を試みたいところではあるものの,今後は,他の自治体においても「政策波及(policy diffusion)」*4の様相を観察することもできそうか.考えてみると,やはり興味深い.

*1:東奥新報(2010年2月4日付)「駅弁・空弁、その名は「津軽弁」

*2:弘前市HP(行政情報)「平成21年度施政方針と予算 図表で見る平成21年度予算」8頁

*3:ポール・ミルグロム, ジョン・ロバーツ『組織の経済学』(NHK出版,1997年)32頁

組織の経済学

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*4:伊藤修一郎『自治体政策過程の動態』(慶応義塾大学出版会,2002年)37頁

自治体政策過程の動態―政策イノベーションと波及

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