県の不正経理問題で、松沢成文知事は25日の会見で羽田愼司(62)、小野義博(61)の両副知事を引責辞任させる事実上の更迭人事を発表した。両副知事は同日午前に辞表を知事に提出、受理された。31日付で辞任する。県は18日に過去最多となる職員約1700人の処分のほか、知事自身と副知事らの給料の一部の自主返納を公表していた。後任は未定で、当面は古尾谷光男副知事の1人体制となる。
 松沢知事は「人心一新を図り、県庁再生に向けての覚悟を示すため、考え得る中で最も厳しい措置を取った」「(副知事が)事務方のトップとして、最終的な責任を負わなければならない」などと説明。前日24日夕に、両副知事に辞任を求めたという。他の自治体で不正経理が発覚した際、両副知事が「県では絶対にないと思う」と報告したことなども決断理由とした。古尾谷副知事は不正経理の内部調査開始後の昨年6月に就任したため対象としなかった。
 知事自身に追加的な処分がなかった点には「県庁を立て直すことが使命。途中で投げ出すことは逆に県民の信頼を裏切ることだ」とし、「次の選挙に出るか分からないが、もし出るとしたらそこで判断が示される」と話した。すでに知事が給料の10分の6(1カ月)、副知事が10分の3(1カ月)を自主返納する事実上の処分を18日に決定しているが、「(今回の更迭は)自分の考えを副知事に伝え、納得してもらい辞表を提出してもらっており、処分ではない」などと述べた。
 羽田副知事は総務部長などを経て2007年6月、小野副知事は理事などを経て同年10月に就任した。神奈川新聞社の取材に対し、羽田副知事は「副知事に就任したときから辞表を胸に仕事をしてきた。24日までの議会で難しい条例をすべて通せたことを誇りに思い、責任を取る時期だと考えている。副知事が辞めることで問題の重大さを職員に伝えたい」と話した。小野副知事は「知事と話をした上で、事務方のトップの責任の取り方として辞職がいいと受け止めている。再生した県庁を示すという意味では『新しい酒は新しい革袋に』という形も必要だと思う」と語った。
 県の調査では、03〜09年度で総額16億6千万円の不正経理が判明。税務課に在籍した元職員4人(1人は故人、3人は懲戒免職)が「預け金」から約1億2千万円を着服した不祥事も発覚している

県町村会幹部による前副知事中島孝之被告(68)=収賄罪で起訴、保釈=ら県幹部への裏金接待問題で麻生渡知事は25日、自らを減給10分の5(6カ月)とする処分の方針を示すとともに、副知事の倫理確立を掲げた「副知事倫理条例」案の内容を固めた。県議会定例会最終日の26日、関連する条例案を提出する。
 減給の条例案は4−9月まで現行の給料(月額135万円)を半額の67万5千円とするもの。減給総額は約400万円の見込み。県によると、職員の不祥事に伴う麻生知事の減給処分は1995年の就任以降3度目で、96年に発覚した県の公金不正問題の際は減給10分の5(16カ月)だった。
 副知事倫理条例案は、県職員倫理条例の対象外である特別職の副知事の倫理確保を目的としている。供応・接待や利益供与を受けてはいけないといった規範を設定。違反した場合に副知事から説明を求める倫理調査委員会を設置することや、資産報告書の提出なども盛り込まれる方向だ。
 裏金接待問題をめぐっては、県の職員倫理調査委員会(永次広会長)が麻生知事に対し、副知事を対象にした倫理条例の制定など再発防止策を提言。知事は23日の県議会・総務企画地域振興委員会で同条例の制定や、自身の給料を減額する考えを表明していた。

両記事では,副知事への帰責の対処方策に関して紹介.
第1記事では,神奈川県における不正経理問題に伴う副知事更迭について紹介.同県では,2010年3月18日付の神奈川新聞において報道されているように,「2003〜09年度で計約16億6千万円」の「不正経理」が行われたことに対して,「3人の副知事が給料の10分の3,公営企業管理者,病院事業管理者,教育長が給料の10分の1を,それぞれ1カ月,自主返納」が求められ,「地方公務員法に基づく新たな懲戒処分」として「減給5人,戒告8人」,「人事上の戒めで賞与などの査定の対象にならない処分」としては「文書訓戒146人,口頭訓戒83人,厳重注意969人,所属長指導50350人」*1に対して,それぞれ処分されている.そのため,一見する限りでは,手塚洋輔先生が整理された帰責の形態における,「強い組織責任」「代表責任」*2による処分が果たされているようではあるものの,本記事では,知事による帰責処分として,いわゆる「代表責任」*3としての処分として整理ができそう.
第2記事では,副知事に関する倫理条例の制定について紹介.同県では,2010年3月3日付の西日本新聞において報道されているように,福岡「県後期高齢者医療広域連合の設立」に関連する「汚職事件」による「前副知事」が「収賄罪で起訴」*4されたことを踏まえて,副知事への「任期制」の導入や,「副知事を就任させるにあたっては倫理の順守などを求める」*5ことが想定されており,いわば,「再発防止のためのルール整備」としての帰責の形態とされる「弱い組織責任」*6として,後者の方針に関連し「副知事倫理条例案」が策定され,議会へと上程される方針であることを紹介.
「責任実践」*7としての「問責」と「答責」の具象化として,考えさせられる,2つの記事.悩ましい.

*1:神奈川新聞(2010年3月18日付)「県不正経理問題で1717人処分、過去最多/神奈川県

*2:手塚洋輔「だれが「更迭」されるのか」御厨貴編『変貌する日本政治―90年代以後「変革の時代」を読みとく』(勁草書房,2009年)173頁

*3:前掲注3・手塚洋輔2009年173頁

*4:西日本新聞(2010年3月3日付)「麻生知事 「副知事 原則2期まで」 福岡県議会 汚職事件を重視

*5:前掲注4・西日本新聞(2010年3月3日付)

*6:前掲注3・手塚洋輔2009年173頁

*7:瀧川裕英『責任の意味と制度』(勁草書房,2003頁)11頁

責任の意味と制度―負担から応答へ

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