上田清司知事は、4選を果たした知事選から一夜明けた10日の定例会見で、自身の任期を3期までと定めた多選自粛条例について「実効性がなくなってきた」と述べ、条例の廃止や改正を検討する考えを示した。一方、上田氏の条例破りを「前代未聞だ」と批判してきた自民党県連の幹部らは「条例を軽く見ている」と問題視し、上田氏が改廃の議案を県議会に提出しても自民は反対する可能性を示唆した。(谷岡聖史)
 上田氏は前回と前々回の知事選では自民と民主、公明の各県組織の支援を受けた。だが、三期目途中から四選出馬を示唆する発言を繰り返すようになり、独自候補の擁立を進めていた自民との対立を深めた。
 県議会最大会派の自民は今年の六月定例会で、上田氏に対し「条例を順守して引退するか、四期目を目指すなら条例の改廃を議会に提案するよう求める」との決議案を出して可決された。しかし、上田氏は「選挙間際に改廃すれば(自身に)『説明責任を逃れた』とのイメージができてしまう」として応じなかった。
 上田氏はこの日の会見で、改廃案を提出するかどうかを「議会の各会派に相談したい」と述べたが、自民側は反発。県連幹事長の鈴木聖二県議は会見で「選挙に勝ったから即、改廃の議論に持って行くのは、条例というものを軽く見ている」と指摘。同席した新藤義孝・県連会長も「順番が違う」と述べ、決議に従って告示前に提出するべきだったと批判した。自民県連は今回の知事選で、当初は順天堂大医学部教授の天野篤氏の擁立を目指したが、六月二十二日に「断念した」と発表。告示直前の七月一日に出馬表明した元総務官僚の塚田桂祐氏(58)を事実上の独自候補として支援した。
 塚田氏や新藤会長らは選挙戦でも上田氏の条例破りを批判。だが上田氏は約八十九万票を獲得して四選を果たし、二番手の塚田氏の得票数は半数以下の約三十二万票にとどまった。
 知事は会見で「民意が出た以上、(条例破りの問題は)もう争点にならない。戦の後のスタートは白紙になる」と強調したが、鈴木氏は「選挙が終わったから『ノーサイド』というのは勝者の論理だ」と対決姿勢をあらわにした。
◇確定得票
当891,822 上田清司 無 現<4>
 322,455 塚田桂祐 無 新 
 228,404 柴田泰彦 無 新 
  49,884 石川英行 無 新 
  32,364 武田信弘 無 新 

本記事では,埼玉県における「埼玉県知事の在任期間に関する条例」の検討方針を紹介.
2004年6月に制定された「埼玉県知事の在任期間に関する条例」では,「第一条」で,「この条例は,知事が幅広い権限を有する地位にあることにかんがみ,知事の職に同一の者が長期にわたり在任することにより生ずるおそれのある弊害を防止するため,知事の在任期間について定め,もって清新で活力のある県政の確保を図ることを目的とする」と目的を規定し,続く「第二条」では,「知事の職にある者は,その職に連続して三期」「を超えて在任しないよう努めるものとする」*1と,在任期間の努力規定を置いてる.
本記事では,2015年「8月10日」に開催された同県知事記者会見にて「条例の廃止や改正を検討する考え」が示されたことを紹介.同記者会見の記録では,「実効性が実態的に無くなってくるもの」との考えとともに「議会の皆さん達と相談」*2する方針が示されている.
自治体の権力者を拘束・統制するための道具」*3としてよりも,「政治信条を縛る条例」*4と整理されている同条例.今後の審議状況は,要経過観察.

*1:埼玉県HP(埼玉県法規集)「埼玉県知事の在任期間に関する条例」(平成十六年八月三日,条例第五十二号)

*2:埼玉県HP(県政情報・統計広報知事の部屋定例記者会見平成27年)「知事記者会見テキスト版 平成27年8月10日

*3:金井利之『実践自治行政学』(第一法規,2010年)21頁

*4:前掲注2・埼玉県(知事記者会見テキスト版 平成27年8月10日)