出雲市が市単独事業の必要性や改善点を審議するため、市民を委員に交えた同市版の「事業仕分け」を10月に実施する。外部の視点で無駄の有無などを洗い出し、来年度以降の予算編成に反映させるのが狙い。事業仕分けに市民を加えるのは、埼玉県富士見市滋賀県草津市が行っているが、山陰両県内の自治体では初めてとなる。
 全事業を一から検証する「ゼロベース評価」の導入は、出雲市の長岡秀人市長が昨春の市長選で掲げた公約の1つ。これに基づき、市は本年度予算編成で、庁内で費用対効果などを踏まえた見直し作業を行ったが、さらに透明性を高めようと、市民も交えて公開の場で議論、判断してもらう「ゼロベース評価委員会」の設置を決めた。市によると、同委員会は2班体制とし、それぞれ有識者から選ぶ進行役1人、専門委員4人程度と、市民判定員20人程度で構成。同判定員は無作為抽出した市民1千人から希望者を募り、選ぶ。
 審議時間は1事業につき、40分間程度とする見通し。市の事前の事業概要や課題の説明で、市民判定員から上がった疑問点も踏まえ、専門委員が質疑、議論し、同判定員が「不要(廃止)」「民間実施」「現行通り」といった結論を導き出す。その後、市が予算編成や事業の見直しに生かす仕組みとなっている。
 10月2、3両日に開催する予定で、審議対象は市単独事業のうち、イベントなど、ソフト事業を中心に40件程度とする考え。一方で、市民判定員の下す結論が即、市の最終判断となるわけではないものの、市議会の一部には「議会軽視」につながりかねないとの慎重論があり、今後議論を呼びそうだ。

本記事では,出雲市における「事業仕分け」の取組を紹介.「ゼロベース評価」制度の詳細については,「出雲市ゼロベース評価実施要綱」*1を参照.
同制度でいう「ゼロベース評価」とは,同要綱第2条第1項「実施機関が行う事業について,既存の枠組みにとらわれず,ゼロから必要性,費用対効果等を評価すること」とされ,その対象は,同要綱第3条により「実施機関が行うすべての事業」とされている.同制度の手続としては,「実施機関が行った1次評価を基に,委員会が2次評価を実施する」と,同要綱第5条第1号に規定.そのため,本記事にて紹介されている「ゼロベース評価委員会」が,一次評価者として「ゼロベース」で評価を行う手順としては想定されてはいない模様.ただし,同要綱第5条第2号では,その「実施にあたり,その対象事項,評価項目,評価の視点その他必要な事項は,実施の都度,委員会が要領により別に定めるものとする」とも規定されており,「機能しない評価」として「評価官僚制」*2へと至る蓋然性を低める手順も想定されているとも考えられなくもない.
2010年4月24日付の本備忘録では,藤沢市における,公募される住民から構成される「市民評価員」制度を加えた「事業仕分け」の取組を取り上げたものの,藤沢市の同制度では「市民評価員意見表明」の機会提示に止まるものの,同市では実際に評価者として参加される模様.「評価人は,裁判員制度みたいに国民から抽選で選んでもいい」*3との「将来的」な「方向性」*4も示されている,国レベルでの「事業仕分け」.
同市では,本記事でも紹介されているように「市民判定員20人程度で構成」され,「同判定員は無作為抽出した市民1千人から希望者を募り,選ぶ」手続が想定されている.同市の無作為抽出の参加を通じて,いかに「異なる他者の間に共通理解を形成」され,「集合的な問題解決」*5に至ることとなるか,要経過観察.

*1:出雲市HP(出雲市例規集)「出雲市ゼロベース評価実施要綱」(平成21年出雲市告示第417号)

*2:南島和久「NPMをめぐる2つの教義」山谷清志編著『公共部門の評価と管理』(晃洋書房,2010年)33頁

公共部門の評価と管理

公共部門の評価と管理

*3:枝野幸男『「事業仕分け」の力』(集英社,2010年)179頁

「事業仕分け」の力 (集英社新書)

「事業仕分け」の力 (集英社新書)

*4:前掲注3・枝野幸男2010年:180頁

*5:田村哲樹「熟議民主主義における「理念と情念の位置」」『思想』No.1033,2010年5月167頁

思想 2010年 05月号 [雑誌]

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