名古屋市は8日、市が管理する239カ所の歩道橋に企業や商品名を標示できる「ネーミングライツパートナー制度」を導入すると発表した。大阪府で試験的に行われたケースに続き2例目で、市全域での募集は全国初となる。
 民間企業にPRの場を提供する一方で、財源を確保する狙い。収入は、歩道橋の塗装代や維持費にあてる。パートナーに選ばれると、1カ所につき年30万円以上を支払うことで、企業の愛称や商品名を橋げたに掲げられる。契約は3年以上で、標示や消去の費用は応募者側が負担する。来年1月7日まで募集し、同4月からの契約となる。選定は、金額やデザイン、歩道橋周辺の清掃や花壇の管理などのボランティア活動の計画も審査対象となる。
 大阪府は今年2月、枚方市の国道沿いにある歩道橋1カ所で募集。目の前の自動車ディーラーが応募し、年45万4000円で5年契約を結んだ。

本記事では,名古屋市において,同市が管理される歩道橋に対して開始された命名権の取組を紹介.同取組に関しては,同市HPを参照*1
「民間の資金を活用して道路施設の持続可能な維持管理」.を目的として開始された同取組.「名古屋市が所有する歩道橋」を対象に,「歩道橋1橋あたり年額30万円以上」で「3年以上の期間」で命名権を取得し,取得後は,「対象となる歩道橋の桁部分」へ「企業名,商品名(企業ロゴの使用も可能です)などの愛称を標示」することができる.加えて,命名権の取得者に対しては,「当該歩道橋その周辺の清掃美化活動など地域貢献の場として活用する提案を期待」ともあり,同市としても,当該取得者に対して「地域貢献」*2への促し示されている.「選定方法」は,「外部委員を含む選定委員会」が,次の5つの観点とそれぞれの配点をもとに,「総合的」に判断.選定時の観点としては,「提案金額」(50点),「提案期間」(10点),「愛称,デザインは適切」さ(10点),「地域貢献への提案は適切」さ(15点),「当該団体等は当該施設のパートナーとして適当」さ(「社会貢献の実績,経営の健全性,法令順守への対応」*3)(15点)とされている.上記の「地域貢献」に関しては,上述の自発的な活動としての促しに止まらず,選定基準としての配点も15点と配点されており,命名権者は変われども,歩道橋は変わらずからか,選定段階では,「期間」よりも「地域貢献」へ重みが配慮されているようでもあり,興味深い.
また,「歩道橋に愛称を標示する費用及びパートナー契約終了時に標示を消去する費用」は「すべて」命名権者の「負担」となり,更には,「概ね30万円程度と想定」される「歩道橋への愛称標示及び契約終了時の愛称消去」も命名権者が「道路法(昭和27年法律第180号)第24条の承認を受け,施工」されることとなり,「施設名称が数年で変わることの不便さ」*4は勿論,その「転換費用」にも配慮されてか,「契約したパートナー」は「次回契約期間に関して優先的に交渉すること」*5とも規定されている.また,「契約当事者の事情・違法行為等」により「当該施設の愛称の維持が困難な場合」に「契約を解除すること」*6という拒否権を同市側にはあるものの,むしろ,一度命名権を取得された方との「垂直的統合(vertical integration)」*7が企図されているとも整理ができなくもなさそうか.

*1:名古屋市HP(事業向け情報募集情報募集緑政土木局からのお知らせ歩道橋ネーミングライツパートナーを募集します。)「歩道橋ネーミングライツパートナー募集要項

*2:前掲注1・名古屋市(歩道橋ネーミングライツパートナー募集要項)1頁

*3:前掲注1・名古屋市(歩道橋ネーミングライツパートナー募集要項)3頁

*4:稲沢克祐『自治体歳入確保の実践方法』(学陽書房,2010年)164頁

自治体歳入確保の実践方法

自治体歳入確保の実践方法

*5:前掲注1・名古屋市(歩道橋ネーミングライツパートナー募集要項)3頁

*6:前掲注1・名古屋市(歩道橋ネーミングライツパートナー募集要項)3頁

*7:オリヴァー・E・ウィリアムソン『市場と企業組織』(日本評論社,1980年)425頁

市場と企業組織

市場と企業組織