市の名称を企業名などに変える命名権ネーミングライツ)の売却を検討している大阪府泉佐野市は1日、募集要領を公表した。申し込みの受け付けは11月の1カ月間。現時点で応募の打診はないが、市は「多くの提案を期待したい」と話している。
 命名権の売却は、財政難にあえぐ市が税外収入を得ようと計画。公共施設や市道、地名のほか、市の名称まで対象とした。契約期間は市名や地名が10年以上、公共施設は3年以上。看板や印刷物など名称変更に伴う費用は企業側の負担とし、来年4月からの契約を想定している。市名の変更には市民や事業者の抵抗感が強く、市議会の同意や大阪府総務省との協議も必要。ハードルは高く、要領には「提案通り変更できるとは限りません」とのただし書きを入れた。募集要領は市のホームページ上で紹介し、今月6日〜11月22日に質問を受け付ける。市の担当者は「市名はともかく、公共施設などの問い合わせはあるのでは」と期待している。【山田泰正】

本記事では,泉佐野市における命名権の取組を紹介.2012年3月22日付の本備忘録でも記録した同取組.「有料広告提案事業者」の「募集」に関する「要領」を公開されたことを報道.同要領は,同市HPを参照*1
同取組の趣旨は,「これまで各種有料広告による歳入確保」に加えて「さらなる財源確保に向け」て,「民間企業の発想やアイデア」により同「市が所有する有形・無形のさまざまな資産を広告媒体として活用する」ことも目的とするもの.「市の名称変更や市の一部地区の変更の場合」には「10年以上」,「ネーミングライツ命名権)」では「3年以上」,「その他の広告提案事業」は「1年〜5年」を契約期間として想定.
広告提案の具体的な内容としては,まずは「市の名称を企業名等に変更」以外にも,「市の名称に企業名等の愛称を付与」,「市の一部地区の名称を企業名等に変更」「市庁舎等(他施設を含む)に企業名等の愛称を付与」,「職員が企業名等の入った制服を着用」,「市道に企業名等の愛称を付与」,「市役所1Fに企業PRコーナーを設置」,「市役所各階エレベーターホール壁面及び市民ロビーに広告表示可能な大型液晶パネルを設置」,「市役所玄関に企業広告の入ったフロアマットを配置」,「市役所エレベーター内部壁面に企業広告を掲出」,「観光情報センター,市民サービスセンターに企業PRコーナー等を設置」*2と参考事例も提示されている.同市の取組は,市名公募のみが特出しされているものの,まさに「あらゆる可能性を考慮」*3された取組であることが分かる.
ただやはり「市の名称を企業名等に変更」する取組を整理をしておくと,同取組には本記事でも紹介されているように,次のような「但し」書きが加えられている.「行政内部での手続きのほか,市議会・住民合意,大阪府との協議等が必要となるため,提案どおり変更できるとは限りません」*4,という.また,その審査にあたっては,別途「単なる価格提案のみの判断だけでな」いこと,そして「その企業が持ち合わせている強みや長所など」が同「市の施策等と融合・連携」することで「先駆的な事例・ビジネスモデルとして取り組むこと」,そして,これらにより「企業のイメージアップ」と同「市の活性化や市民福祉の向上に資するようなwin-win の関係を築く提案」であること,更には「本社機能を本市へ移転するなど」のように,同市が,提案企業と間で「今後強固なパートナーシップを築くことができる内容を企画提案書に必ず明記」*5することも求めている.なるほど.
公募は,2012年11月1日(木)から2012年11月30日(金)までに「提案書」*6を提出し,その後,同「市が設置する選定委員会」にて審査.同委員会では,「市の要求する水準を満たす内容であること」「計画が継続的に履行し得る内容であること」等の「確認」のうえ,例えば「市名変更提案」には,4項目から審査.審査項目と配点は,「企業の信頼性・事業継続性」に20点,「提案金額」には40点,「企画提案内容」は20点,「その他」に20点*7とある.これにより,「総合的な見地から提案の内容等」を「審査」*8.また,「審査結果が一定の基準に満たない場合」には「選定しないこと」*9も想定されている,という.選定後,上記の手続を経た場合には,2013年4月からの「事業実施」*10を予定.
上記の選定手続と公募要件,評価項目を拝読させて頂くと,確かに「提案金額」の配点は高いものの,他の自治体の企業誘致と比べても,必ずしもひとくちに「商業主義」*11とは断定してしまうには難しそうな取組としても理解できなくもなさそう.今後の応募状況や選定過程は,要経過観察.

*1:泉佐野市HP(各課のご案内市長公室政策推進課政策推進課のリンク泉佐野市有料広告提案事業者募集事業泉佐野市有料広告提案事業者募集)「泉佐野市有料広告提案事業者募集要領

*2:前傾注1・泉佐野市(泉佐野市有料広告提案事業者募集要領)1頁

*3:「取材リポート地方行革へのチャレンジ1 空港連絡橋利用税や税外収入の確保で,早期の財政健全団体脱却を目指す 大阪府泉佐野市」『ガバナンス』No.134,2012年6月号,32頁

ガバナンス 2012年6月号

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*4:前傾注1・泉佐野市(泉佐野市有料広告提案事業者募集要領)1頁

*5:前傾注1・泉佐野市(泉佐野市有料広告提案事業者募集要領)2頁

*6:前傾注1・泉佐野市(泉佐野市有料広告提案事業者募集要領)4頁

*7:前傾注1・泉佐野市(泉佐野市有料広告提案事業者募集要領)6頁

*8:前傾注1・泉佐野市(泉佐野市有料広告提案事業者募集要領)5頁

*9:前傾注1・泉佐野市(泉佐野市有料広告提案事業者募集要領)6頁

*10:前傾注1・泉佐野市(泉佐野市有料広告提案事業者募集要領)8頁

*11:マイケル・サンデル『それをお金で買いますか』(早川書房,2012年)283頁

それをお金で買いますか――市場主義の限界

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