大阪府は28日、2011年度の職員採用試験から、法律などの専門知識の問題を廃止し、エントリーシートの活用など民間に近い手法で実施する方針を決めた。府職員希望者の減少を憂慮しており、幅広い人材を確保するのが狙いだ。実施時期も民間志望者が併願できるよう前倒しする。
 知識偏重から人物重視とすることで「公務員試験のイメージ打破」を目指す。府によると、こうした方式は他の都道府県では例がないという。府によると、時事問題や数的処理が課された従来の1次試験を、自己PRのエントリーシートなどに変更。2次の論文試験は政治経済の専門知識がテーマだったが、社会常識にする。実施時期は「大卒程度」で現在の6月下旬から5月上旬に変更する。

本記事では,大阪府における2011年度職員採用試験の取組について紹介.同取組の詳細は,同府HPを参照*1
同取組では,「「公務員試験は筆記試験重視」というイメージを打破」し「人物重視の評価を徹底」され,加えて,「民間企業志望の大学生や転職希望の社会人が受験しやすい試験」へと改める方針.具体的には,「(1次試験の「択一式」を廃止」され,「択一式に代えて,「小論文」で基礎的な学力を評価」すること,あわせて「法律・経済分野の記述式論文を廃止」されることが第1点目.第2点目は,「民間企業の採用選考で一般的な「エントリーシート」を導入」されること,ただし,同シートは「1次試験日に試験会場で記入」する方式を採用される模様.第3点目としては,「「個別面接」では,求める人材像へのマッチングを重点的に評価」,更に,「「集団討論」に代えてより実務に即した「グループワーク」を導入」されるとのこと.第4点目は,試験日程の変更であり,「大学生の多い行政Aの「22-25」区分と技術職の「大学卒程度」」に関しては,「1次試験を5月上旬に実施し6月下旬に最終合格を決定」*2される,という.
また,本記事では紹介はされてはいないものの,より詳細な点において,興味深い取組もある.恐らくは,第3点目とも関連するためとも想定されるものの,「最終合格者の決定」に際しては,「2次,3次試験では前段階の試験の成績をリセット」され,「最終合格者は3次試験(18-21,高校卒程度は2次試験)の結果のみを判定し,決定」される「リセット方式」*3も採用されるという.なるほど.
2009年7月20日付の本備忘録にて記録した,東京都への職員派遣等を経て,同府における職員採用試験の独自作成という「模倣導入」*4となり,「平成22年度から大阪府独自の択一式試験問題により試験を実施」,加えて,「試験問題の持ち帰り公表」*5が実施.今回の「「択一式」を廃止」の方針は,いわば「政策転換のコスト」(より具体的には,試験作成の実施コスト)を勘案されたのであろうか.要確認.ただ,勿論,試験方式が,「筆記にしろ,面接にしろ,採用試験で試される能力は圧倒的に言葉で表現される一定の知的能力」*6の把握を試みられようとされる,大変,興味深い取組.
また,2009年5月17日付同年7月26日付同年11月24日付2010年3月24日付の各本備忘録でも言及した「試験日程」の「早期化」*7により,2010年8月11日付同年10月3日付同年12月10日付両本備忘録で記録した,合格数者過誤と採用者数過誤との間での「ディレンマ」*8への対応も想定されなくもない.同制度実施後の,採用予定者数に関しては,要経過観察.

*1:大阪府HP(報道発表資料)「職員採用試験制度が大きく変わります

*2:前掲注1・大阪府(職員採用試験制度が大きく変わります)

*3:大阪府HP(報道発表資料職員採用試験制度が大きく変わります)「大阪府職員採用試験制度の見直し内容

*4:西尾勝『行政の活動』(有斐閣,2000年)183頁

行政の活動

行政の活動

*5:大阪府HP(府政運営・市町村職員採用大阪府職員採用案内)「職員採用試験問題を全面公表

*6:大森彌『自治体職員』(良書普及会,1994年)5頁

自治体職員論

自治体職員論

*7:福島貴希「都市自治体における職員採用」村松岐夫・稲継裕昭・財団法人日本都市センター編著『分権改革は都市行政機構を変えたか』(第一法規,2009年)155頁

分権改革は都市行政機構を変えたか

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*8:手塚洋輔『戦後行政の構造とディレンマ』(藤原書店,2010年)24頁

戦後行政の構造とディレンマ―予防接種行政の変遷

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