鳥取県は、県情報公開条例に基づき今年3月までの5年間に県議らから受けた「働き掛け」や「提言」の全容計113件を開示、関係議員の実名も公開した。開示は15日付。共同通信が請求した。道路建設に絡み県議が担当課に要望を繰り返した記録など、普段は表面化しにくい行政と議員らの関係の一端が浮き彫りになった。
 県の積極的な開示姿勢は、外部の過剰な「圧力」をかわすのが狙い。国や他の自治体の公開制度にも運用面で影響を与えそうだ。今回開示された113件は、住民の声を受けた県議からの提言がほとんどで、公共事業をめぐる要望が目立つ。市長ら首長の提言はごく一部。水はけの悪い道路の対策や各種イベントへの協力依頼、行政の不備を指摘する提言もあった。議員や首長に相談した県民の個人情報は非開示となった。

本記事では,鳥取県において,同県議会議員からの「提案」「働き掛け」の内容を,情報公開請求に基づき,開示されたことを紹介.
2002年6月1日より,同県で開始されてきた「県議会議員からの提案・要望・意見等の文書化」*1の取組.「いろんな話」が「県議会議員の皆さんから」「持ち込まれ」,「場合によっては圧力になることもある」一方で,「全く一般的な提案とか提言とか,そういうものである場合も多い」*2との現状認識のもと,「民主主義の世の中,オープンな世の中というのは,やはり提案をしたり指示をしたりする人が前面に出て,説明責任を果たさなければいけない」*3という,いわば,政策の「原生地(habitat*4」を明らかにするとの考えを踏まえた制度化.
具体的には,「行政の内部情報が大体文書化され」ることから「情報公開の手続にのっとって,情報公開の一般原則に従って公開」され,「その中にプライバシーのことがあるとか,そういうものがあれば,それはその部分だけ,部分的に非開示になりますけれども,他はすべて公開請求があれば公開」*5との方針が示されており,本記事を拝読させて頂くと,「今回開示された113件は,住民の声を受けた県議からの提言がほとんど」となり,「議員や首長に相談した県民の個人情報は非開示」ともされた模様.
議会独自にもまた,情報公開条例を制定されている17都道府県*6の1つではあるものの,「情報公開制度は,行政統制のための情報基盤」*7とも解されるなかで,執行機関への統制を通じた,いわば,議会統制のための情報基盤ともなりえなくもなく,興味深い.

*1:鳥取県HP(県の組織と仕事統轄監広報課パブリシティ前知事の知事記者会見録平成14年度の知事記者会見知事定例記者会見(2002-05-20)平成14年5月20日(月)午前10時〜)「2県議会議員からの提案・要望・意見等の文書化について

*2:前掲注1・鳥取県(2県議会議員からの提案・要望・意見等の文書化について)(知事,発言)

*3:前掲注1・鳥取県(2県議会議員からの提案・要望・意見等の文書化について)(知事,発言)

*4:Heald,Daivd.2006.‘Varieties of Transparency’Christopher Hood,David Heald(eds.)Transparency The Key to Better Governance: Oxford UP:37.

Transparency: The Key to Better Governance (Proceedings of the British Academy)

Transparency: The Key to Better Governance (Proceedings of the British Academy)

*5:前掲注1・鳥取県(2県議会議員からの提案・要望・意見等の文書化について)(知事,発言)

*6:総務省HP(広報・報道報道資料一覧報道資料一覧:2009年8月)「情報公開条例(要綱等)の制定状況調査の結果(平成21年8月7日)

*7:礒崎初仁・金井利之・伊藤正次『ホーンブック地方自治』(北樹出版,2007年)214頁

ホーンブック 地方自治

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