片山善博総務相は7日、全国知事会など地方6団体の代表に、通常国会で提出を予定している地方自治法改正案を説明したが、住民投票制度の拡充などについて反発や慎重論が相次いだ。
 改正案では、住民投票の対象を条例で定めた場合に大規模公共施設建設の是非に拡大し、投票結果に法的な拘束力を持たせるが、地方側は「議論は不十分で、拙速な法改正に反対」(知事会)「余計なおせっかいだ」(全国町村会)などと批判。直接請求制度の対象に地方税関連条例を含める方針についても、安易な減税要求が乱発されることへの懸念が相次いだ。このほか、鹿児島県阿久根市の前市長が議会を開かずに繰り返した専決処分についても、厳格化の方針に疑問の声が出された。
 片山氏は住民投票制度の拡充について「(政策の)選択の幅を増やすのが目的。国の押し付けではなく自治体議会の判断だ」と理解を求め、「迷惑施設などは対象としない」とした。

本記事では,総務相による地方六団体への地方自治法改正案に関する説明内容を紹介.
2011年1月2日付の本備忘録においても言及した,地方自治法改正案.「総務大臣・地方六団体会合」において,意見交換が行われた模様.同意見交換の内容に関しては,現在のところ,本記事のみではあるものの,配布資料に関しては,全国知事会HPを参照*1.また,同会合では,「地方自治法抜本改正についての今後の方向性」に関する配布資料も配布されている*2.同資料を拝読すると,大別すると「速やかに制度化」と「引き続き検討」の二つ対応方針に区分されている(これらの方針への仕分けの理由の差異はどのようなものなのだろうか,要確認).そして,これらの「地方自治法抜本改正」の事項のうち,「速やかに制度化」とされた事項が,いわば,「決定アジェンダ*3となり,地方自治法の「一部改正」の「改正事項」として6項目が示されている.
まずは,「地方議会制度」に関しては,「地方議会の会期」について,「条例により,定例会・臨時会の区分を設けず,通年の会期とすることができること」とすること,また,「臨時会の招集権」については,「議長等の臨時会の招集請求に対して長が招集しないときは,議長が臨時会を招集することができること」, 「議会運営」については,「委員会に関する規定を簡素化し,委員の選任等に関する事項を条例に委任する」こと,そして,「本会議においても,公聴会の開催,参考人の招致をすることができること」とされている.第二に,「議会と長との関係」に関しては,まず「再議制度」について,「一般再議の対象を条例・予算以外の議決事件に拡大する」こと,そして,「専決処分」については,「副知事及び副市町村長の選任を対象から除外する」こと,そして,「条例・予算の専決処分について議会が不承認としたときは,長は条例改正案の提出,補正予算の提出など必要な措置を講じなければならないこととする」*4こと, 更に,「条例公布」については,「長は,条例の送付を受けた日から 20日以内に再議に付す等の措置を講ずる場合を除き,当該条例の公布を行わなければならないこと」とされている.第三に,「直接請求制度」に関しては,「解散・解職の請求に必要な署名数要件を緩和する」こととされており,具体的には,「有権者数の3分の1」としつつも,「16万から40万の部分については6分の1,40万を超える部分については10分の1」とされている.加えて,「条例制定・改廃請求の対象から地方税の賦課徴収等を除外している規定を削除する」ともある.第四に,本記事でも紹介されている「住民投票制度の創設」に関してであり, 「大規模な公の施設の設置について,条例で定めるところにより,住民投票に付することができることとする」とある.第五に,「国等による違法確認訴訟制度の創設」であり,「国等が是正の要求等をした場合に,地方公共団体がこれに応じた措置を講じず,かつ,国地方係争処理委員会への審査の申出もしないとき等に,国等は違法確認訴訟を提起することができること」とされている.最後に,「一部事務組合・広域連合等」に関するものであり,「一部事務組合等からの脱退の手続を簡素化」,「一部事務組合の議会を構成団体の議会をもって組織することができる」とすること,そして,「広域連合に執行機関として長に代えて理事会を置くことができる」*5こととされている.
上記の第四の「住民投票制度の創設」における同解説部分からは,本記事でも紹介されているように,選択的な位置づけとなり,「特定の案件については議会任せにしないで主権者自身が行使しようとするのは,地方自治の原点により近づく仕組み」*6であるという観点からの制度設計の趣旨は確かである模様.ただ,一方で,同解説の下部では,「条例で定める大規模な公の施設の設置を議会が承認した後,住民投票を実施し,住民投票過半数の同意がなければ,当該公の施設は設置できない」とも記されいる.そのため,議会の承認結果の如何を問わず,住民投票が実施される義務付けでのあるかのようにも解することもできなくはない.どのように風に解すると適切なのだろうか.法案作成過程も,要経過観察.

*1:全国知事会HP(国との意見交換「総務大臣・地方六団体会合」について(2011年2月7日))「資料1−1 地方自治法の一部を改正する法律案(概要)について

*2:全国知事会HP(国との意見交換「総務大臣・地方六団体会合」について(2011年2月7日))「資料1−2 「地方自治法抜本改正についての考え方(平成22年)(平成23年1月26日・総務省)【概要】

*3:John W. Kingdon(2002)Agendas, Alternatives, and Public Policies,Longman Pub Group,4.

*4:前掲注1・全国知事会(資料1−1 地方自治法の一部を改正する法律案(概要)について)1頁

*5:前掲注1・全国知事会(資料1−1 地方自治法の一部を改正する法律案(概要)について)2頁

*6:片山善博『日本を診る』(岩波書店,2010年)151頁

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