地方制度調査会(首相の諮問機関)の専門小委員会は28日の会合で、政府が国会提出を目指している地方自治法改正案に関する答申案を全国知事会など地方6団体に示し、併せて意見聴取した。答申案では、住民投票で反対が多数の場合に大規模公共施設の建設を中止する制度の導入について、「引き続き検討すべきだ」とし、先送りを提言した。
 また住民が減税条例の制定などを自治体に直接請求できるようにする制度の導入については、地方議会の活性化など意義を認めつつも、「対象税目や署名数要件、実施時期等について十分検討を加えた上で制度化を図るべきだ」と指摘。厳しい地方財政に配慮し、慎重姿勢を示した。政府は1月、住民自治の拡充などを目指し、同法改正についての基本的な考え方をまとめた。地方6団体は、議会制民主主義の観点などから疑問があるとして当初反対していたが、同日の会合では大きな異論は出なかった。地制調は12月の総会で答申をまとめる意向だ。(2011/11/28-19:07)

本配信記事では,地方制度調査会における審議状況を紹介.同会の専門小委員会にて「地方自治法改正案に関する意見」が確定された模様.現在のところ,同意見に関しては,同会HPでは確認できず,残念.公表後,要確認.
地方自治法の改正事項の一つとされていた「大規模な公の施設に係る住民投票制度」に関しては,2011年11月17日に開催された第4回専門小委員会への配布資料「地方自治法改正案に関する意見(骨子)」を拝読させて頂くと,「長が施設の目的,位置,予定事業費,財源を明らかにした上で,その設置について議会に承認を求め,議会の承認が得られた場合に住民投票を実施するものであり,議会審議等を通じてその対象に係る必要な情報や論点が住民に明らかになるという効果も期待でき,また,代表民主制にも配意された工夫された案」と,まずは一定程度のその意義と評価を示される.しかし,あわせて,「市町村の廃置分合や長と議会が対立した案件等を対象とすることも考えられる」こと,そして,その「拘束力が及ぶ期間についても検討すべき」であること,更に,「拘束的住民投票制度の導入」は「住民自治の充実の観点から意義を有すると考えられる」ものの「住民投票を実施する場合の要件や対象等について更に詰めるべき論点があること」から,「引き続き検討すべき」*1として「意見(骨子)」段階では記述.
本配信記事を拝読させて頂くと,「先送り」との結論に至ったとも報道.恐らくは,「意見」の内では,「意見(骨子)」に倣い,「引き続き検討」と記載されているとも想定はされるものの,では,地制調にて今後も継続的な検討を進められるのか,又は,別途,新たな場を設置され,検討を継続されることにもなるのだろうか.同制度の検討状況は,要確認.
下名個人的には,同制度とともに,気になったのが「国等による違法確認訴訟制度」*2.「抑制的であった」とされる自治体の「自主的法令解釈」*3のなかでも,いわば自主的過ぎる法令解釈と判断されてか,「国と地方公共団体との間で法律解釈を巡る齟齬が生じた場合に,これを事後的に解消する手段が不十分」*4として,「国等が是正の要求等をした場合に,地方公共団体がこれに応じた措置を講じず,かつ,国地方係争処理委員会への審査の申出もしないとき等に,国等は違法確認訴訟を提起することができることとする」ように,同「制度の創設」*5も,2011年8月24日に開催された第1回総会の配布資料では記載.ただ,同制度に関しては,毎回の専門小委員会への配布資料及び審議では扱われた形跡を確認できない.そのため,上記「意見(骨子)」の段階では,当該制度に関しては記載されていない.
なるほど,今回の地方自治法の改正案事項は多種多様であり,その専門的審議に要する時間と全体の審議時間とトレードオフの関係からも,総会レベルでは「政策アジェンダ」とされつつも,専門小委員会での「決定アジェンダ*6として,絞り込まれたとも考えられなくもない.では,総会レベルでは,「意見」の審議とともに同制度に関しても審議が行われることになるのだろうか.はたまた,今回の地方自治法改正案では行わないとの決定がなされたのだろうか,こちらも要確認.

*1:総務省HP(組織案内審議会・委員会・会議等地方制度調査会会議資料第30次地方制度調査会第4回専門小委員会)「地方自治法改正案に関する意見(骨子)」5頁

*2:総務省HP(組織案内審議会・委員会・会議等地方制度調査会会議資料第30次地方制度調査会第1回総会)「地方自治法の一部を改正する法律案(概要)について」(平成23年8月,総務省自治行政局)2頁

*3:松本英昭「自治政策法務をサポートする自治法制のあり方」北村喜宣・山口道昭・出石稔・礒崎初仁『自治政策法務』(有斐閣,2011年)498頁

自治体政策法務 -- 地域特性に適合した法環境の創造

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*4:総務省HP(組織案内審議会・委員会・会議等 地方行財政検討会議)「「地方自治法抜本改正についての考え方(平成22年)」(総務省平成23年1月26日)15頁

*5:前掲注2・総務省地方自治法の一部を改正する法律案(概要)について)2頁

*6:秋吉貴雄,伊藤修一郎,北山俊哉『公共政策学の基礎』(有斐閣,2010年),49頁

公共政策学の基礎 (有斐閣ブックス)

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