市民の声をまちづくりに生かそうと、熊本市は「2000人市民委員会」を設置する。約2000人に委員を委嘱し、アンケートや研修会を通じて寄せられた意見を施策立案などの参考にするのが狙い。任期は2年。
 9日の定例会見で幸山政史市長が明らかにした。市によると、18歳以上の市民から無作為抽出した1万人に委員承諾依頼の封書を来週中にも発送。返信で承諾を得た市民から年齢や住所などのバランスを考えたうえで8月ごろ正式に委員を委嘱する。活動内容は年4回程度のアンケートのほか、任期中2回程度の全体研修会が予定されており、調査結果は市政だよりとホームページで知らせる。研修会の際には交通費として公共交通プリペイドカード「To熊カード」1000円分を配布する予定。幸山市長は会見で「市政の状況を深く理解してもらってご意見をいただき、的確に反映していきたい」と話した。【澤本麻里子】

本記事では,熊本市における市民委員会設置の取組を紹介.同委員会の取組に関して同市HPを確認させて頂くものの,現在のところ,公表はされていない模様.公表後,要確認.
同委員会の設置をめぐる同市議会での審議内容を拝読させて頂くと,例えば,2011年2月28日に開催された第1回定例会では,同市市長より次のような説明がなされている.つまり,同委員会設置の目的は,「市政のさまざまな政策課題」に関して,市民の「関心と理解を高め」市民の「声をより的確に市政へ反映させることを目的とするもの」とする.ただ,その性格に関しては,「同委員会は委員同士の議論によって政策を決定するというものではな」いとも述べ,あわせて,「本市が政策の立案や政策課題の対応に当たり,幅広く市民」の「意見を伺い,それを参考とするもの」ともいう.いわば,意見聴取手続の一つとして設置される模様.
また,同市では従来「おでかけトーク」や「校区自治トーク」「パブリックコメントなどを実施」されてきたものの,これらは「市政に関心のある方々から積極的」に「意見」を調達する仕組みであると整理され,一方で「同委員会」は「協力いただける方を無作為に抽出する」仕組みであるとして,これにより「市政に余り関心を抱いてこられなかった方々にもその委員として市政への理解を高め」た上で意見を調達することを企図されているという.具体的には「人選の方法」では,「18歳以上の市民」を「対象」に「年齢構成,男女割合,住所などを勘案」した「無作為抽出」を行い,その抽出されたなかから「本人」の「承諾」を得た上で「委嘱」*1されることになる模様.
その参加者数が増加することで,住民から提示される各種情報が量的な増加となる一方で,質的には極めて多様性ももつことが企図されなくもない(そうでない場合もありますが)なかで,これらの量的拡大化・質的多様化が生じる「市民参加」の「実質的な参加」*2に対して,実質的な「応答」*3をどのように図られることになるのか,その実施状況も要経過観察.

*1:熊本市HP(熊本市議会会議録の検索)「平成23年1回定例会 02月28日」(市長(幸山政史))54頁

*2:新川達郎「公的ガバナンスの変化とサード・セクター」新川達郎編著『公的ガバナンスの動態研究』(ミネルヴァ書房,2011年)240頁(昨晩,都心部で開催された研究会への往路にて,第1部と第2部第6章を拝読.特に,第6章の都道府県の「補完機能」の重みに関しては考えさせて頂く点も多く,下名も,大都市制度との間で観察してみたい課題)

*3:原田久『広範囲応答型の官僚制』(新山社,2011年)102頁(本務校の前期の講義を履修されている学生さんたちとも輪読.下名,「行政官僚制の対内的活動」の裁量的行動に焦点を当てつつ自治体行政の観察を試みていることからも学ぶところばかりでの刺激が多い再読の機会となりました)

広範囲応答型の官僚制 ―パブリックコメント手続の研究 (学術選書64)

広範囲応答型の官僚制 ―パブリックコメント手続の研究 (学術選書64)