鹿児島県屋久島町議会は23日、世界自然遺産屋久島の自然保護を目的に縄文杉などに立ち入る観光客数を制限する条例案を賛成ゼロ、反対17の全会一致で否決した。反対理由は観光業界への影響の大きさを念頭に「住民への理解が得られていない」とした。
 条例案は、特に保護が必要な自然として(1)縄文杉に向かう「大株歩道」周辺の植生(2)永田浜のウミガメ(3)西部地域の生態系と歴史的資源−を指定。これら3地区への立ち入りを町長の承認制とし、手数料は1人400円としていた。町は縄文杉周辺を1日420人に制限した場合、昨年実績に照らすと年間約9千人が入山できず、宿泊施設などに総額約2億3千万円の損失が生じると試算。このため観光ピークの分散化を図ると理解を求めていたが、議員は「420人の人数に裏付けはあるのか」などと反発していた。
 否決を受け、日高十七郎(となお)町長は「まだ精査が必要という趣旨と理解した。観光業界への説明や再検討を重ね、9月までに条例案を再提出したい」と話している。

本記事では,屋久島町議会における条例案の審議結果を紹介.2011年6月23日付の本備忘録で記録した,同町内の3地区への立ち入りを承認制とする同条例案のその後.本記事を拝読させて頂くと,「全会一致で否決」された模様.
本記事後段では,同町長のコメントとして「9月までに条例案を再提出」される方針であることも紹介.内容は「オデュッセウスの鎖」*1であるかのような条例案.それがゆえに反対もされることも想定されなくもない.如何にして「多様な主体間で」「とりあえず合意をしておく」「同床異夢という状態」のための「リフレーミングによる問題構造化」*2を図ることになるか,要経過観察.

*1:小田亮『利他学』(新潮社,2011年)225頁

利他学 (新潮選書)

利他学 (新潮選書)

*2:秋吉貴雄,伊藤修一郎,北山俊哉『公共政策学の基礎』(有斐閣,2010年),79頁

公共政策学の基礎 (有斐閣ブックス)

公共政策学の基礎 (有斐閣ブックス)