県は24日、2010年度情報公開、個人情報保護制度の運用状況をまとめた。情報公開請求は前年比約50%減の7695件。県は大幅減の理由を「これまで多かった建築関係の請求が他の条例などの規定に基づき可能になったため」と説明している。
 県によると、請求が多いのは医療法人の財務関係書類や県発注工事の設計書などで、営業目的が大半という。請求処理状況の内訳は、全部公開が3268件(42・5%)、個人情報などを黒塗りした一部公開が4247件(55・2%)、文書不存在などによる非公開が180件(2・3%)。一方、個人情報保護制度に基づく請求件数は1万3175件。大半は高校入試や教員採用試験などで自分の成績を調べるために利用していた。

本記事では,神奈川県における情報公開制度及び個人情報制度の運用状況に関して紹介.2010年度度の同制度の運用状況は,同県HPを参照*1
「前年度との比較」の結果を拝見させて頂くと,2009年度では請求人数2,638人,請求件数が15,256件であったところ,2010年度は2,391人の請求人数で7,695件の請求件数となり,「請求者数は前年度比11%減」「請求件数は前年度比50%減」*2の状況.あわせて,「請求件数の多い行政文書」の「上位5位」の結果を拝見させて頂くと,2010年度では「建築計画概要書」が「6,334件」が最も多く,次いで「医療保護入院に関する文書」が「1,803件」,「県知事発注工事の設計書等」の「1,280件」,「政治資金収支報告書に添付された領収書」の「1,140件」,「社会福祉法人等の財務関係書類」の「394件」の順.一方,2011年度では「医療法人の財務関係書類」が「1,510 件」,次いで「 県知事発注工事の設計書等」が「991件」,その後,「社会福祉法人の財務関係書類」が「485件」,「職業技術校等の入校選考問題,解答」が「401件」,「学校法人の財務関係書類」が「261件」の順となっている.
本記事でも紹介されているように,「建築計画概要書」に関する請求が求められなかったことがその主たる要因の模様.本記事でも紹介されているように,「建築計画概要書」に関しては「他の法令等の規定に基づき写しの交付の請求が可能になった」*3ことがその背景と分析されており,他の「外側(outwards)」*4への透明性の経路が拡散配置されており,同経路が利用されている模様.
情報公開制度の運用では,請求人・請求件数の多寡が必ずしも当該自治体における「透明性(transparency)」とは直結しないとも考えられる.一方で,他の「情報提供制度」*5の経路が確保充実している場合,敢えて情報公開制度の経路を利用する方々は,自ずと限定されていることも考えらなくもない.情報公開制度,情報公表制度の両制度を通じた行政情報の摂取の現状もまた,下名も考えてみたい観察課題の一つ.興味深そう.

*1:神奈川県HP(神奈川県記者発表資料記者発表資料 県政記者クラブ2011年度の一覧)「平成22年度情報公開・個人情報保護制度運用状況について

*2:神奈川県HP(神奈川県記者発表資料記者発表資料 県政記者クラブ2011年度の一覧平成22年度情報公開・個人情報保護制度運用状況について)「情報公開の請求件数が半減 〜平成22年度情報公開制度・個人情報保護制度の運用状況〜

*3:前掲注1・神奈川県(情報公開の請求件数が半減 〜平成22年度情報公開制度・個人情報保護制度の運用状況〜 )

*4:Heald,Daivd.2006.‘Varieties of Transparency’Christopher Hood,David Heald(eds.)Transparency The Key to Better Governance: Oxford UP:28.

Transparency: The Key to Better Governance (Proceedings of the British Academy)

Transparency: The Key to Better Governance (Proceedings of the British Academy)

*5:宇賀克也『行政法概説?第4版』(有斐閣,2011年)177頁

行政法概説1 行政法総論 第4版

行政法概説1 行政法総論 第4版