複数の自治体が共同で事業を行うために設置する「一部事務組合」で、京都府滋賀県にある44団体のうち20団体が、管理者を務める構成自治体の首長ら特別職に報酬を支払っていることが京都新聞社の調査で分かった。組合業務は自治体業務の延長にあるとして、本来の首長給与と合わせ「二重支給」との指摘もあり、議論を呼びそうだ。
 7月末から今月初めにかけ、全組合に聞き取った。京都の14組合、滋賀の6組合が正副の管理者を務める首長らに、年額79万2千〜1万円の報酬を支払っていた。京都の26市町村首長のうち20首長、滋賀の19市町首長のうち5首長が管理者報酬を受けていた。複数の組合管理者を兼務している首長もいて、年額で最多は5組合を兼務して3組合から報酬を得ている南丹市長で、計113万2千円(期末手当除く)。3組合の京丹波町長が計106万円、2組合の亀岡市長が計96万円と続いた。
 正管理者に支払っている報酬を見ると、「南丹病院」など丹波地域の3組合は年額79万2千〜60万円、「乙訓消防」など乙訓地域の3組合は14万4千円、「相楽郡広域事務」など相楽地域の5組合は6万円と、地域でばらつきがあった。滋賀で最も高いのは「甲賀広域行政」と「公立甲賀病院」の18万円だった。最も高い組合は「南丹病院」の79万2千円で、京滋の組合では唯一、ボーナスにあたる期末手当(昨年17万1600円)を別に支給している。同じ病院組合でも「山城病院」は年額報酬6万円で、約16倍の差があった。「南丹病院」によると管理者の主な職務は、議会の定例会出席(年2回、いずれも1日)▽重要案件の決裁−などがある。組合事務局は「命と健康を守る病院の最高責任者の重みを考えると報酬額は決して高くない」とする。管理者の佐々木稔納・南丹市長は「責任ある役職に就く以上、報酬は当然で、二重支給ではない」と話している。
 ■見直し検討必要
 市川喜崇・同志社大教授(地方自治)の話 一部事務組合の業務は自治体の業務を切り分けしている点で各首長の任務の延長線上にあると言え、報酬は見直しの検討が必要だ。市民との距離が遠く、これまで組織の在り方について議論がなされてこなかった。事務の効率化という設立趣旨に則して、支給の是非や額の妥当性を広く話し合うべきだ。
 ■一部事務組合 消防や上下水道、ごみ処理など、自治体が単独でするよりも複数で共通の業務に取り組んだ方が効率的な場合に設置する地方自治法上の組織。構成自治体が分担金などを出し合い、独自の議会を持つ。組合の長である管理者や、議員の報酬額は条例で定めている。管理者や議員は構成自治体の首長や議員が兼務するケースが多い。総務省の調べでは、2010年時点で全国に1572組合ある。

本記事では,京都府及び滋賀県内に位置する市町村で構成された一部事務組合における管理者報酬の支払い状況を紹介.支払い状況は同紙の調べ.同調べを踏まえ,同紙では「組合業務は自治体業務の延長」として「首長給与」と「二重支給」との虞があるのではないかとの認識が示されている.
両府県の一組の設置状況は,両府*1*2HPを参照.一組も独立した法人格をもつため報酬に関しても独立はしたものと解せそう.ただ,同法設置に関する地方自治法の規定からすれば,「その事務の一部を共同処理するため」(地方自治法第284条)と,まずは「普通地方公共団体及び特別区」の事務があることが一先ずの前提ともされる場合,「組合業務は自治体業務の延長」との指摘もまた該当はしそうか.考えてみると興味深そうな論点(ただ,逐条等が手元にないので,後日,要確認).
普通地方公共団体の議会と比較して活発とはいえない団体があり」「住民の眼が届きにくいという弊害」*3も指摘されることがある一組に設置される議会.とはいえ,報酬内容は同議会での審議次第とも思わなくはないものの,見直しが行わる場合,どのように進められるかも,要経過観察.

*1:京都府HP(地域振興府内市町村市町村に関する施策について市町村のあらまし【平成22年度版】)「一部事務組合・広域連合の状況

*2:滋賀県HP(組織から探す)「一部事務組合・広域連合

*3:宇賀克也『地方自治法概説第4版』(有斐閣,2011年)57頁

地方自治法概説 第4版

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