特別自治市構想「主張に合理性なし」 神奈川県が見解(日本経済新聞2022年3月16日)
政令市が道府県から独立して権限や財源の移譲をめざす「特別自治市構想」を巡り、神奈川県知事と横浜・川崎・相模原の3政令市長が議論する懇談会が6日、横浜市役所内で開かれた。人口減少や財政難の中、同構想を実現したい3政令市と否定的な県との対立が鮮明になっている。3政令市は、子育て支援や河川管理、都市計画などで県と政令市の「二重行政」を解消すれば、行政サービスの向上や効率的な行政運営につながると主張。新型コロナウイルスへの対応も、政令市が権限や財源を持てば、より迅速にできるとしている。
これに対し、県は政令市が特別自治市に移行した場合、財源不足から政令市以外の市町村で県の行政サービスの水準が落ちると指摘。新型コロナ患者の入院搬送や災害対応など広域自治体として県が果たす「総合調整機能」にも支障が生じると反論している。
6日の懇談会は約1時間余り、公開の場で行われた。特別自治市構想についての議論は平行線のままだったが、今後も「住民目線」から4首長で話し合っていくことを合意した。
懇談会後の記者会見で、神奈川県の黒岩祐治知事は「スタート地点では意見が大きく離れているが、議論を練り上げていきたい」と語った。横浜市の山中竹春市長は「少子高齢社会での行政サービス提供について新しい地方自治のあり方を考える時期に来ている」と指摘した。
川崎市の福田紀彦市長は「住民目線で議論を深めていきたい」と話し、相模原市の本村賢太郎市長は「人口減少社会で神奈川県がどう生き残っていくかについては基礎自治体としても関心の高い問題だ」と語った。
特別自治市構想の実現には地方自治法の改正などが必要で、全国知事会では反対や慎重論も多い。全国20政令市でつくる指定都市市長会は早期実現を求める提言を取りまとめるなど国への働きかけを強めている。
本記事では、横浜市、川崎市、相模原市と神奈川県における大都市制度に関する懇談の取組を紹介。
同市県では、2022年5月6日に「第44回」の「首長懇談会」*1を開催。
同懇談会では、「特別自治市構想等大都市制度」に関して「率直な意見交換」を行い、「まずは当事者である県と指定都市で議論をしていくことが必要という意見」や「検討に当たり指定都市以外の市町村の意見を聞くことも必要という意見」、「県と指定都市における権限や財源のあり方など、様々な課題について、まずは事務レベルで検討する場を設けて進めていくべきという意見」や「スピード感をもって首長レベルでの定期的な議論が必要という意見」が述べられ、「県と指定都市の課題を共有し、住民目線で解決を図っていくため、知事、三市長のトップレベルでの協議を行っていくことで合意」*2されている。
大都市制度をめぐる「シナリオ」*3の今後の推移は要観察。
*1:横浜市HP( 市の情報・計画:広報・広聴・報道:記者発表:政策局:記者発表 2022年度)「第44回 県・横浜・川崎・相模原四首長懇談会の結果概要について」
*2:横浜市HP( 市の情報・計画:広報・広聴・報道:記者発表:政策局:記者発表 2022年度:第44回 県・横浜・川崎・相模原四首長懇談会の結果概要について)「第44回 県・横浜・川崎・相模原四首長懇談会の結果概要について」
*3:宇野二郎・長野基・山崎幹根『テキストブック地方自治の論点』(ミネルヴァ書房、2022年)282頁