世田谷区の保坂展人区長が今春の就任以降、2週に1回のペースで定例記者会見を開いている。会見は新年度予算案発表時だけで定例はない区がほぼ半数の23区にあって、飛び抜けて高い頻度だ。定例会見や懇談会の数だけで行政のオープン度を示せるわけではないが、首長の情報発信への意欲を推し量る指標とはなりそう。各区を比較してみた。(松村裕子)
 「数カ月に一回だと忘れてしまう案件も多い。できる限りフレッシュな情報を伝え、意欲的な区政運営をしたい。本当は毎週開きたい」保坂区長は、就任後にこう述べ、二週に一回の会見を始めた。九月からは会見の動画中継や配信も開始、公約に掲げた情報公開を進める姿勢を見せる。
 二十三区ではここ数年、新年度予算案発表時以外にも記者会見を開く区長が増えた。定例議会前後に開く区が多いが、これまでは月一回の中野、江東が最も頻度が高かった。四月の統一地方選後には世田谷のほか、豊島も定例会見を始めた。約五年前から始めた中野の田中大輔区長は「区政でしていることは報道されないと、やっていないのと同じ。報道は区でやっていることを区民に知ってもらう最大の手段で、会見は区民との接点づくり」と動機を語る。豊島の高野之夫区長は、四選を果たした区長選を通じ「政策の意図が伝わらないことを痛感した」とし、六月区議会で「自らの言葉で積極的に政策を語りたい」と七月からの月例会見開催を表明した。一方で、十二区が新年度予算案の発表時のみ。「会見をするのは不祥事発生時のおわびぐらい」(ある区の広報担当職員)というところが多い。千代田など「発表内容があると随時会見は開いている」「必要に応じて取材にも応じている」という区もあるが、「忙しい」「話題がない」との理由を挙げる区も。以前は定例会見を試みていたが、話題がなく、記者が集まらないためやめたという区もある。
 全国的にみると、県庁所在地の名古屋市は週一回、政令指定都市川崎市は月二回、相模原市は月一回。地方でもNHK連続テレビ小説の舞台となっている人口約十万人の長野県安曇野市で月一回開いている。
 早稲田大マニフェスト研究所の中村健・次席研究員は、記者会見に消極的な区が多い理由の一つとして、都に財政、権限を握られ、正規の自治体としての意識が薄いことを挙げ、「記者会見に限らず、随時、情報を発信し住民とやりとりして情報を共有できる環境を整えておくことが大事」と指摘した。

本記事では,23特別区における区長による定例記者会見の実施状況を紹介.なるほど,興味深い記事.
本記事内で述べられているように,一概に「行政のオープン度」への「観察可能な含意」*1となるか否かは必ずしも判然とはしないものの,2011年2月3日付及び同年4月3日付の各本備忘録でも記録したように,首長による定例記者会見は,首長の「現前性」*2を通じて,当該自治体,そして,当該首長御自身の政策の捉え方を伝達し,観察できる貴重な資料.下名個人的にも個別自治体の観察の際に,活用させて頂く資料の一つ.
本記事に倣い,下名も,23特別区の区長さんによる定例記者会見を「一月単位」で開催されている区を確認してみると,世田谷区が月2回*3江東区*4と中野区*5,豊島区*6では月1回の開催と,いずれも本記事で報道されている4区のみの模様.一月単位以外では,例えば,足立区*7のように概ね定例会毎の期間でも開催されている区もある.
本記事後段では「話題がなく,記者が集まらないためやめた」区もあることも紹介.記者会見を通じた情報の名宛人の想定次第ではあるものの,区民に限るのであれば,必ずしも記者さんを媒介せず,多様なメディアを利用する方法も考えられなくもない.存外参考になる情報も多く,その結果が集約的に提供し,そして記録されていると,その利用度は広まりそうか.

*1:G.キング, R.O.コヘイン, S.ヴァーバ, 『社会科学のリサーチ・デザイン』(勁草書房,2004年)22頁

社会科学のリサーチ・デザイン―定性的研究における科学的推論

社会科学のリサーチ・デザイン―定性的研究における科学的推論

*2:大森彌『現代日本地方自治』(放送大学出版会,1995年)116頁

現代日本の地方自治

現代日本の地方自治

*3:世田谷区HP(行政情報のトップページ区長の部屋)「記者会見

*4:江東区HP(江東区プロフィール区長室)「定例記者会見テキスト版

*5:中野区HP(中野区のご案内報道資料2011年報道資料)「2011年9月15日 区長9月定例記者会見を行いました」(同区では,定例記者会見に関する単独のページは,設けられていないようですね)

*6:豊島区HP(広報報道発表平成23年7月)「豊島区長 月例記者会見」(同区も,定例記者会見に関する単独のページは,設けられていないようですね)

*7:足立区HP(はい、区長です)「区長記者会見