観音寺市は24日、2012年度の予算編成方針を発表した。財政の硬直化が一段と進むと見込まれる一方で、新庁舎や新市民会館の建設などの大型事業を15年度までに予定していることから、引き続き事業の選択と集中を図り歳出の抑制を進める。
 予算編成では、本年度と同様に各課ごとに予算要求の基準額を設ける「枠配分方式」を採用する。同市は「すべての経費を対象に、事業の成果や費用対効果の検証などに基づき、ゼロベースで見直しに取り組む」としている。このほか歳出の抑制策として、事業の廃止・休止に加え、アウトソーシングなどの手法の検討も行う。歳入の確保では、厳しい経済情勢が続く中、市税の収納率向上に努めるほか、使用料・手数料の改定などを検討。また、未利用地の売却や広告収入の拡大などを図る。

 幸山政史熊本市長は25日、政令指定都市に移行した初年度となる2012年度当初予算の編成方針を発表した。昨年まで導入していた一律削減の要求基準(シーリング)を廃止し、すべての事業を1件ずつ査定する方式に変え、事業の選択と集中を進めた予算編成とする。
 これまで政策的経費と経常的経費は各局ごとに前年度比一律5%削減などのシーリングを設定。しかし、削減が困難になり基準を上回る要求が増えたため、「一律削減では限界」(幸山市長)と判断した。全事業を、廃止も含めゼロベースで1件ずつ査定することで、事業を取捨選択する方針。
 予算編成の基本方針として(1)県からの移譲303事務経費など政令市移行に関する予算は確実に盛り込む(2)地域経済の活性化や雇用創出効果などに配慮する(3)「わくわくプロジェクト」など重点的・集中的な取り組みに優先配分する(4)事務事業外部評価会議(事業仕分け)の議論を踏まえた上で要求する−の4項目を示した。総括事項として「既存事業の必要性・妥当性の再点検」「事業の優先度を見極め、すべての分野でコスト縮減を図ること」「国庫補助金の活用など積極的な新規財源の確保」なども求めた。市財政課が試算した12年度一般会計当初予算総額は、11年度当初比5・4%増の約2849億円と過去最高額になる見込み。うち国県道の管理など政令市移行に伴う増加分は約224億円となる見通し。
 幸山市長は「これから丁寧に査定を続け、政令市元年にふさわしいメリハリの効いた予算を編成したい」と話した。(横山千尋

両記事では,第一記事では観音寺市,第二記事では熊本市における予算編成方針の公表の取組を紹介.観音寺市の同方針に関しては,「平成23年度」*1分までは公表されており,恐らくは今後公表されるものと推測されるものの,「平成24年度」分は,現在のところ確認できず.公表後要確認.熊本市の同方針は,同市HPを参照*2
2008年4月2日同年10月25日2009年10月17日同年10月18日付同年11月27日付2010年10月7日付の各本備忘録で取り上げた「枠配分」制度.確かに,各本備忘録からも,「最近では,財政課による集権的な予算編成を大幅に変更して,各セクションに一括して予算枠を配分し,細部についての配分は各部局に任せようという予算編成の仕方」の採用には,「もはや全体に配分できる十分な財源がない」という実質的な背景により,「部局としての自律性」*3に基づく予算編成が行われている様子も観察できる.
方や,第二記事を拝読させて頂くと,同市では,「政令指定都市移行に伴い,区制の施行を始めとする新体制での予算執行となること」から「平成24年度予算編成においては全件1件査定を基本とした予算編成を行う」*4と,やや特殊な背景ゆえの一件査定の採用とも解せそう.ただ,2008年4月2日同年10月25日2009年10月17日同年10月18日付2010年9月10日付同年10月21日付2011年2月14日付の各本備忘録で取り上げたように,自治体内における「財政部(局)統制」の頑強化に由来する一件査定の復権の様子も窺える(と下名が勝手に見立てております).一件査定の復権の背景には,上記の枠配分制度導入の実質的背景に倣えば,「もはや部局に配分できる十分な財源もない」とも解せそうな,「財政部(局)統制」とも整理ができそうな一件査定の採用.
個別自治体の各々で採用される予算編成と査定の取組.総体としては,「集中化の中の分散化,分散化の中の集中化」*5の動向が窺えそうでもあり,まとめて整理をしてみたい観察課題(来年度の,学部演習のテーマにしようかなあ).

*1:観音寺市HP(市政行政情報財政状況)「予算

*2:熊本市HP(行政情報財政・行政改革・情報公開・監査)「平成24年度予算編成方針について

*3:稲継裕昭『地方自治入門』(有斐閣,2011年)22〜23頁

地方自治入門 (有斐閣コンパクト)

地方自治入門 (有斐閣コンパクト)

*4:熊本市HP(行政情報財政・行政改革・情報公開・監査平成24年度予算編成方針について)「平成24年度予算編成方針について」(財政発第 190号,平成23年10月18日)

*5:田尾雅夫「開かれた市政運営」村松岐夫・稲継裕昭・財団法人日本都市センター編著『分権改革は都市行政機構を変えたか』(第一法規,2009年)184頁

分権改革は都市行政機構を変えたか

分権改革は都市行政機構を変えたか