さいたま市清水勇人市長は5日の年頭記者会見で、二重行政を防ぐことなどを狙いとした県と市の事務レベルの協議会を来週にも設置する方針を明らかにした。同市が目指す特別自治市構想や橋下徹大阪市長の「大阪都」構想など、政令市と県との関係をめぐる議論が活発化していることに対応するもので、さまざまな政策課題についての連携強化を図る。
 清水市長と上田清司知事は互いに「良好な関係」であることをこれまでも示してきたが、さらに県企画財政部長や市政策局長ら部局長レベルによる協議会を定期的に開催し連絡調整を行う。市長が知事に提案、合意した。これまで県と市は、さいたま新都心8−1A街区整備や地下鉄7号線延伸など個別課題で協議の場を設けてきたが、課題を限定せずに日常的な協議会を設置するのは初めて。
 県と政令市の二重行政について市長は昨年11月の会見で、「さいたま市政令市になってまだ8年なので、大阪のように府と市の両方に大学、病院、工業研究所などがあるほどではないが、一部で二重になっている部分がある」と指摘。具体的には県営住宅と市営住宅保育所(市)と幼稚園(県)▽小中学校運営(市)と教員給与支払い(県)▽地域医療計画(市)と病床許可(県)▽雨水処理・下水道管理(市)と河川管理(県)などを挙げた。5日の会見で清水市長は「制度面での改革の必要性は感じているが、実態の面で連携を強化すれば、より効果的なやり方ができると思う。実務ベースで一層協調、連携することで政策が充実していく」と語った。一方、県の下仲宏卓企画財政部長は「これからどういうテーマについて連絡調整をしていくか検討を始める」と話した。

本記事では,さいたま市と埼玉県における「二重行政」の防止のための協議会設置の方針を紹介.
同方針に関しては,「さいたま市長記者会見」*1を参照.同記者会見画像では,4:50頃から,協議会設置の方針を同市長より紹介.本記事でも紹介されている構成,具体的な今後の進め方に関する説明は,幹事者質問への応答後,17:00から説明.同協議会の設置に関しては,同市長側から同知事へ「口火を切」るように提案がなされ,知事との間での合意により設置.
ただ,同市と同県との間では,「機能の分散と行政組織の分担」*2とも分析されることもある権限関係に関しては,「比較的役割分担はうまくいっている」との認識にあるとも述べられている.そこで,同協議会では,「県とさいたま市が,より一層,協調・連携」を図ることを目的に,「具体的な案件があがってきたとき」「より連携」を図ること,そして,今後の「二重行政を防ぐ」ことを企図し設置.なた,従来,同市長と同知事間での意見交換は定期的実施されていたこともあり,同協議会では,より「実務ベース」での開催される.ただし,同協議会に関する「細かい点」は,本記事でも紹介されているように「来週以降」と述べられるものの,その構成は,「部局長レベル」で,同県は「部長」級で「企画財政部」,同市では「局長」級で,「政策局,財政局のメンバーが中心」とも説明.具体的な協議の場において,「トポクラート」*3としての総務系職員(組織)を主たる構成となることが想定されている模様.
また,「必要に応じて他のメンバー」の参加もあるとも説明されており,実際には,「テクノクラート*4たる事業系職員(組織)との間,又は,それぞれの役所内での,「クロスセクショナル」な「調整問題を一つひとつ解いていくこと」は,存外「複雑でデリケート」*5とも想定されなくもない.同協議会での協議状況も,要経過観察.

*1:さいたま市HP(市についてさいたま市の広報記者への情報提供市長記者会見(21年5月〜) )「記者会見(1月)

*2:チャールス・A.ビーアド『東京の行政と政治』(東京都政調査会,1964年)59頁 

東京の行政と政治―東京市政論 (1964年)

東京の行政と政治―東京市政論 (1964年)

*3:伊藤大一「テクノクラシー理論と中央・地方関係」『レヴァイアサン』4号,1989年,38頁

*4:前傾注3・伊藤大一1989年:38頁

*5:松井望「大都市制度をめぐる諸問題‐「二重行政」という問題とその解‐」『都市とガバナンス』vol.16,2011年9月,40〜41頁

都市とガバナンス 第16号

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