各市役所・町役場から県庁への問い合わせも〈ワンストップサービス〉で――。県は、県内20の市町ごとに担当職員を置き、市町職員からの問い合わせに一括して対応する試みを始めた。一つの施策・事業に様々な法律や制度がからむ中、市町からは「県庁内のどこに相談したらいいのかわからない」と不満の声が上がっていた。県と市町の連携強化は中村知事の公約で、県は施策・事業実施のスピード化を期待している。(原典子)
 県によると、担当に任命されたのは、市町振興課や各地方局地域政策課の職員。3、4人で1自治体を受け持っている。市町で施策・事業を進める場合、県に支援を仰いだり、相談しようとしたりすると、大半は複数の部署にまたがり、例えば「町並み保存」なら、補助金、ボランティア、工事、文化財保護法に基づく規制など多岐にわたる。市町の担当者は県の各担当部署に一つずつ問い合わせる必要があり、仕事の効率の悪さが課題となっていた。
 今回の試み以降は、県職員は担当市町からの問い合わせに沿って、市町職員の代わりに県庁内で必要な複数部署とやり取りするなど調整をはかる。その上で、必要な手続きや情報を市町に伝えるようにしている。これに加え、県は市町との情報共有化をより進めるため、インターネット掲示板「市町サポートBBS」を開設。「制度」「税」「まちづくり」など5分野ならば、市町職員は担当職員を通さなくても、県担当課に問い合わせが可能で、逆に県の各部署も制度改正の情報などを掲示板を通じて市町に一斉に流すことができる。
 知事は2011年2月に県と市町の連携会議を設立し、県と市町による“二重行政”の解消に着手。すでに、県と市町の職員の人事交流も進めており、今回の試みについて、「市町重視の県政を追い求める第一歩。連携を密にして、厳しい地域間競争を勝ち抜いていけるよう、『チーム愛媛』としての総合力発揮を目指したい」と話している。

本記事では,愛媛県における「市町支援担当職員制度」の取組を紹介.同制度及びイメージ図に関しては,同県HPを参照*1
「従来」は「市町からの部局横断的な相談や照会に対し」ては,同県では「各部局が縦割りで個別に対応」.これに対して,「県庁全体で市町を総合的に支援」する目的から同制度を導入し,「兼任」も含めた「それぞれの市町ごとに2名」,「合計人数では20名」の同「職員がコーディネーターとなり」,「県の関係部局間の横の連絡」を図る.また,「電子掲示板」も併せて設置することで,「従来」の「文書を送付し個別の質問に応じ」るスタイルから,「電子掲示板を活用し」,「そのあらましや質疑応答を即座に情報共有」することも改められることになる.
本記事でも言及されているように,市町の観点からすれば,同県側の「ワンストップサービス」としても呼ぶことができそうな同制度.転じて,配置される職員の方々の観点からすれば,庁内への「リエゾン*2的な業務の実施が求められる.「行政は人なり」*3という行政観察上の命題に倣えば,「調整も人なり」とも考えられなくもなく,その連絡・調整を担当される職員の方の庁内での「点中心性」*4に依拠される部分もなくはないとも考えられなくもなさそう.配置される職員の方々の経験や,個々の職員の方々の間での対応の平準化も含めた,同制度の運用状況は,極めて興味深そう.要観察.

*1:愛媛県HP(組織別一覧市町振興課)「市町支援担当職員制度の創設に関する記者発表の要旨について」,「市町支援担当職員制度(イメージ)

*2:ヘンリー・ミンツバーグ『マネジャーの仕事』(白桃書房,1993年)104頁

マネジャーの仕事

マネジャーの仕事

*3:大森彌『政権交代自治の潮流 続・希望の自治行政学』(第一法規,2011年)272頁

政権交代と自治の潮流 続・希望の自治体行政学

政権交代と自治の潮流 続・希望の自治体行政学

*4:中野勉『ソーシャル・ネットワークと組織のダイナミクス』(有斐閣,2011年)67頁

ソーシャル・ネットワークと組織のダイナミクス -- 共感のマネジメント

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