財政破綻一歩手前の大阪府泉佐野市は新たな歳入確保策として、企業から広告料をもらう代わりに市の名称を企業名や商品名に変更する自治体名の命名権ネーミングライツ)売却に乗り出すことを決めた。契約期間は1〜5年で、国内外の企業を対象に6月から11月末まで募集し、広告額は企業から提案してもらう。自治体名の命名権が売却されるケースは総務省でも「聞いたことがない」(市町村体制整備課)という。名称変更は議会過半数の賛成で可能だが、市民からの反発も予想される。
 計画では、市の名称のほか、うどん県(香川県)のような自治体の愛称の命名権も売却する。市役所庁舎や、市道の通称も売却対象する。市職員が着用する制服などへの企業広告も募る。広告収入だけでなく、購入企業の誘致もにらみ、新たな雇用創出や税収アップを期待している。市の名称を売却する場合、地方自治法に基づいて、知事の同意を得たうえで、市議会に名称変更の関連議案を提案する。過半数で可決されれば、府を通じて総務相に通知し、総務相が変更を告知する手続きだ。市幹部は「苦しい財政状況を打開するため、あらゆる手段を尽くす。関西空港を抱える立地は、企業にとって世界に情報発信できるメリットがある」としている。
 同市は人口約10万人。1948年に佐野町が市制移行した際、地名に「泉」を付けて誕生した。94年の関西空港の開港に合わせて大型開発を進めたが、景気低迷で税収が伸びず、財政が悪化。2009年度に早期健全化団体に指定された。

本記事では,泉佐野市における市名へ命名権採用の方針を紹介.現在のところ,同市HPでは,同方針に関する情報は公表されていない模様.公表後,要確認.
本記事半ばでは,市名名称に伴う,主に地方自治法第3条第3項から第5項に掛けての手続も紹介.これらの手続のうち,現行の地方自治法第3条第3項では,「都道府県以外の地方公共団体の名称を変更」に際しての都道府県との協議制が規定されている.同協議制度以前では許可制であり,同許可制度の運用に際しては,「条例内容が類似名称若しくは極めて不穏当な名称等名称自体につ許可しないことはもとより,当該条例の議決そのものが違法と認められるときは,それを理由として不許可となし得ること」*1とも解されてきた.
方や,現行「協議制の下」では,「当該条例の議決そのものが違法と認められるとき等は,協議が調わないことは考えられる」*2との理解は引き続き示されている.本記事内で紹介されているように,同協議手続にて,「知事の同意」が不可欠となるかは判然とはしないものの,一方で,命名権を取得した事業者等が名付けた「類似名称若しくは極めて不穏当な名称等名称自体」であることを理由に,協議の不調に至ることは解されない.ただし,命名権であるが故の「名称が数年で変わることの不便さ」*3も内包することからの懸念が示され,その協議が不調に至ることも考えられなくもない.実際の募集状況,同市が位置する大阪府との協議過程は,要経過観察.

*1:長野士郎『逐条 地方自治法 第12次改訂新版』(学陽書房,1995年)56〜57頁

逐条 地方自治法

逐条 地方自治法

*2:松本英昭『新版 逐条地方自治法 第6次改訂版』(学陽書房,2011年)71頁

逐条地方自治法

逐条地方自治法

*3:稲沢克祐『自治体歳入確保の実践方法』(学陽書房,2010年)164頁

自治体歳入確保の実践方法

自治体歳入確保の実践方法