県と県内33市町村は29日、地震などの災害時に自治体が相互応援するための協定を結んだ。県内を6ブロックに分けて協力体制を築き、迅速な情報収集と支援で「公助」が機能不全に陥ることを防ぐ。
 新たな相互応援体制は、横浜市川崎市のほか、各地域の県政総合センターを核にブロックに分割。災害時は県が被災市町村の情報を集約し、被害の少なかった自治体による支援をブロック内で調整。被害が広域に及んだ場合は、別ブロックの市町村や他県、国などに応援要請する。県庁で行われた締結式には、相互応援の仕組みを提言した県市長会会長の服部信明茅ケ崎市長と県町村会会長の山口昇士箱根町長が出席。黒岩祐治知事は「この形が風化しないよう常に検証していくことが大事」と述べ、東日本大震災の教訓を踏まえて実効性を高めていく考えを示した。

本記事では,神奈川県に位置する市町村と同県の間での災害時相互応援協定の締結を紹介.同協定の正式な名称は,「災害時における神奈川県内の市町村の相互応援に関する協定」*1
同協定を拝読させて頂くと,同協定では,「県内の各地域ブロックごとの自律的な連携体制を強化」「地域ブロック相互間での協力体制を構築」(第1条)し,「県外の災害に対しても,この相互応援体制を活用」(第1条)することを企図されている.ここでいう「地域ブロック」とは,「県域を各地域県政総合センターの所管区域」と「横浜市及び川崎市の区域」に分割されている.前者の「地域県政総合センターの所管区域」は,次の5区域に分かれている.まずは,横須賀市鎌倉市,逗子市,三浦市葉山町が位置する「横須賀三浦地域県政総合センター」*2.次いで,相模原市厚木市大和市,海老名市,座間市綾瀬市愛川町清川村が位置する「県央地域県政総合センター」*3.第三に,平塚市藤沢市茅ヶ崎市秦野市伊勢原市,寒川町,大磯町,二宮町が位置する「湘南地域県政総合センター」*4.第四に,南足柄市中井町大井町,松田町,山北町開成町が位置する「足柄上地域県政総合センター」*5.最後に,小田原市箱根町真鶴町湯河原町が位置する「西湘地域県政総合センター」*6である.一つの市域が担体で一つの区域とされている横浜市川崎市と同様に,政令指定都市である相模原市は「県央地域県政総合センター」に位置する.同県に設置された「神奈川県自治行財政権の法制的確立に関する研究会」が2012年3月26日にまとめられた報告書に倣えば,「大都市自治体もその中核になる気持がだいじ」*7ということだろうか.
同協定に基づく,具体的な応援は「食料,飲料水及び生活必需物資の提供」,「その供給に必要資機材の提供」,「応援対策に必要な資機材及び物資の提供」,「避難,救急及び応急復旧等に必要な職員の派遣」(第3条)を行い,その「応援に要する費用」は,「応援を受けた市町村が負担」(第12条第1項)する.また.当該費用負担の方式に,「よりがたい場合は,応援を受けた市町村と応援を行った市町村が,その都度協議して定める」(第12条第2項)ことにもなる.また,同県の役割は「災害情報の収集」「地域ブロック内及び地域ブロック相互間における市町村の相互応援を調整」(第4条第1項)に徹するようでもあり,基本的には各ブロック内での「基礎自治体を中心とした水平的な支援」*8.特定又は複数ブロックの全域内にも及ぶ「広域災害」の場合にも,「地域ブロック相互間」での相互援助という予期の予期からの重畳な相互援助を置くことで,その「強み」*9をより頑健なものとされている模様.なるほど.ただ,「緊急時における対応は,臨機的に完全合理性によって,瞬時に適応する過程ではなく,既存の組織構造及び技術体系によりつつ,新規の事態に対処するものである」*10とすれば,日常時でのこれらの相互支援(連携)の実績も肝要か.日常的な連携の実績は,要観察.

*1:神奈川県HP(神奈川県記者発表資料2011年度3月「災害時における神奈川県内の市町村の相互応援に関する協定」の締結について 掲載日:2012年3月29日)「災害時における神奈川県内の市町村の相互応援に関する協定

*2:神奈川県HP(組織でさがす)「横須賀三浦地域県政総合センター

*3:神奈川県HP(組織でさがす)「県央地域県政総合センター

*4:神奈川県HP(組織でさがす)「湘南地域県政総合センター

*5:神奈川県HP(組織でさがす)「足柄上地域県政総合センター

*6:神奈川県HP(組織でさがす)「西湘地域県政総合センター

*7:神奈川県HP(電子県庁・県政運営・県勢地方分権・自治・外交地方分権神奈川県自治行財政権の法制的確立に関する研究会)「神奈川県自治行財政権の法制的確立に関する研究会 報告書」4頁

*8:外岡秀俊『3・11複合被災』(岩波書店,2012年)91頁

3・11 複合被災 (岩波新書)

3・11 複合被災 (岩波新書)

*9:前傾注8・外岡秀俊2012年:90頁

*10:橋本信之『サイモン理論と日本の行政』(関西学院大学出版会,2005年)170頁

サイモン理論と日本の行政―行政組織と意思決定

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