県は16日までに、庁内事務や県民サービスを電子化する「電子県庁」の2008〜11年度の投資効果を公表。4年間の経費68億6千万円に対し、効果は173億4千万円と算定した。県は「投資を上回る効果を得た」としているが、電子申請受付システムの利用は伸び悩んでいる。
 県は01年度から庁舎や地域振興局の高速通信回線ネットワークなどを整備。これまで01〜04年度分と05〜07年度分で効果を検証している。今回は(1)県例規データベース(2)電子申請受付システム(3)庁内ネットワークを活用したメールなど情報共有システム−など17項目を検証。電子化によって削減できた作業時間や人件費、印刷・紙代、県民の交通費などを効果額として算出した。一方、2005年に始めた電子申請受付システム「よろず申請本舗」は、システム開発まで手掛けていた08〜10年度は計6億円の「赤字」だった。11年度は既製品のシステムを活用して経費を大幅に圧縮。結果、効果が約7千万円上回り「黒字」になった。
 肝心の利用は11年度で5万5千件で、県情報企画課も「利用が十分とは言えない」と認める。利用は、県や市町村職員の採用試験申し込みが最多で約2700件。薬事法に基づく薬局の業務報告が約1100件、事業者による従業員異動の届け出が約700件で続いた。個人の利用は約2割にとどまっているため、県は「取り扱い事務を増やして県民の利便性を高め、周知も図りたい」としている。(福山聡一郎)

本記事では,熊本県における「電子県庁」への投資効果について紹介.同投資効果の内容は,同県HPを参照*1
「情報通信基盤(ネットワーク、パソコン整備等のインフラ)」と「基幹系12 の情報システム」に関しては「経費と効果を比較検証」,「情報通信基盤」に関しては「基盤単体で定量的効果を産み出すものではない」として「定性的効果のみの取りまとめ」られている.加えて,「基盤上で稼働することにより定量的効果を産み出す各情報システム」に関しては「定性的効果・定量的効果の両面からの取りまとめ」*2られている.
同資料の概要版では,これらの測定の際の「システム化による定量的効果(金額換算)算出方法」としては,まず「 行政側の効果」では,「時間短縮」として「作業1件当たりの短縮時間×年間処理件数×職員人件費/時間」,「事務経費等」については,「印刷代や紙代の節減,旧システムと比較した運用費の節減」を算出.「県民側の効果」として,同じく「時間短縮」については「申請等1件当たりの作業や来庁に係る短縮時間×年間件数×住民所得相当額/時間」から算出し,「事務経費等」については「申請等1件当たりに係る交通費、資料作成経費等×年間件数」*3と算出された模様.上記の算出方式に基づく算出結果となる情報通信基盤と情報システムの効果から投資を除いた単年度収支を拝見させて頂くと,2008年度は18.3億円,2009年度は24.2億円,2010年度は28.7億円,2011年度は33.4億円の効果があったことが分かり.「経費を上回る効果が発出していることが検証できた」*4という.「電子政府」化による「官僚組織の既存の行動パタンの変容」*5を把握する試みとしても整理できそう.算定に利用された算定結果に至る個々の算定データも公表されると,より興味深そう.

*1:熊本県HP( 県庁の組織で探す情報企画課熊本県の行政情報化に関する投資効果について)「熊本県の行政情報化に関する投資効果について」(熊本県 企画振興部 交通政策・情報局 情報企画課,平成24年9月)

*2:前掲注1・熊本県熊本県の行政情報化に関する投資効果について)1頁

*3:熊本県HP( 県庁の組織で探す情報企画課熊本県の行政情報化に関する投資効果について)「熊本県の行政情報化に関する投資効果について(概要版)」(熊本県 企画振興部 交通政策・情報局 情報企画課,平成24年9月)

*4:前掲注1・熊本県熊本県の行政情報化に関する投資効果について)18頁

*5:Kettl,Donald F. (2011).The Politics of the Administrative Process Fifth Edition,CQ Press:p.157.

Politics of the Administrative Process

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