大都市制度の見直しを進めている政府の地方制度調査会(首相の諮問機関)の専門小委員会は20日、中間報告を取りまとめた。道府県政令市が同様の事業を行う「二重行政」を解消するため、道府県から政令市への事務権限の移譲を促進するよう求めている。
 地方行政に関する提言を行ってきた地制調が、大都市制度を本格的に取り上げたのは約20年ぶり。今回は二重行政の解消と、新たな大都市制度を主要テーマに、1月から議論を重ねてきた。中間報告は、道府県政令市の二重行政について、政令市に事務権限を移すことで解消するよう提言。具体的な移譲対象として、政令市立学校の教職員給与や、市域内で完結する都市計画に関する権限などを挙げた。税源配分の見直しを含め、移譲に対応した財政措置も同時に講じる。道府県政令市が連絡調整を行う協議会の設置も明記した。
 一方、政令市の財源や権限を道府県から独立させて機能強化する「特別自治市」構想は、一部政令市長が創設を求めたが、具体的な制度設計は先送りした。橋下徹大阪市長が唱える「大阪都」構想については、既に政治主導で特別区の新設を認める新法が成立。このため、事務分担や税財源調整に関する留意点を列挙するにとどめた。このほか、人口要件が30万人以上の中核市と20万人以上の特例市の制度統合も盛り込んだ。

 首相の諮問機関の地方制度調査会専門小委員会(委員長・碓井光明明治大教授)は20日、大都市制度改正に向けた中間報告をまとめた。政令指定都市道府県の権限を大幅に移して二重行政を解消することや、中核市の人口要件を緩和して特例市からの昇格を促すことが柱。総務省は今後、具体化を進め、2014年の通常国会に関連法案を提出する。
 政令市を道府県から独立させる「特別自治市」構想は、横浜市などが制度化を求めているが、道府県警察の分割による捜査力低下の懸念から今後の検討課題として先送りした。

 横浜市の林文子市長は21日の会見で、政府の「地方制度調査会」の専門小委員会が、自治体の「二重行政」を解消するために都道府県から政令指定都市へ事務や税財源の移譲を求めたことについて「画期的だ」と評価した。
 一方、委員会では、横浜市が目指す県から独立した「特別自治市」創設の具体化は先送りされた。林市長は「ただ否定されたわけではない。国策として制度が進められるよう新政権にも強く働き掛けていく。最終的なゴールは独立だ」と強調した。市長は「横浜市は(県の仕事も)全部できる」と明言。教育や都市計画、ハローワーク事務などの分野で優先順位を付けて、権限移譲を実現していく考えだ。
 また、ことしを象徴する漢字1文字について「実」を挙げた。「着実に確実に誠実に仕事をして、実りのある落ち着いた市政をやりたいと心掛けてきた。待機児童対策などさまざまな政策も実を結びつつある」と述べた。

本記事では,第30次地方制度調査会専門小委員会において中間報告を取りまとめたことを紹介.現在のところ,同調査会HPでは中間報告は掲載されておらず,内容を確認できず残念,公表後,要確認*12012年8月22日付及び同年12月3日付にて記録した「特例市制度」の廃止が明記された模様.
ただ,特例市制度の廃止はその紹介は限られており,第1から第3記事まで,いわゆる「二重行政」の解消のための都道府県からの権限移譲と「特別(自治)市」の検討課題化を主に紹介されている.第2記事でも紹介されているように,後者に関しては,警察(法または行政)との「相互補完的」*2からも,中間報告からは検討課題化.前者は,第1記事を拝読させて頂くと,いわゆる法定上の事務に基づく二重性として「政令市立学校の教職員給与」「市域内で完結する都市計画に関する権限」を例示,加えて,「税源配分の見直しを含め,移譲に対応した財政措置も同時に講じる」こと,任意事務による二重性へは「道府県政令市が連絡調整を行う協議会の設置」を提案されたことが分かる.法定と任意からなる「二重行政」.「二重行政」と捉える視点により,その多寡が個々の自治体で異なることが想定されるなくもないものの,任意事務による二重性に対して,同協議会の場で二つの自治体が「ひとつに重なり合い」*3調整を図られることになるか,協議会の設置と運用状況は,要確認.

*1:総務省HP(組織案内審議会・委員会・会議等)「地方制度調査会

*2:伊藤正次「大都市制度と警察制度 −補完と相克」『地方自治』2012年8月号,2頁

地方自治 2012年 08月号 [雑誌]

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*3:松井望「第10章 政策体系と政策過程」柴田直子・松井望編著『地方自治論入門』(ミネルヴァ書房,2012年)212頁

地方自治論入門

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