政策学講義―決定の合理性

政策学講義―決定の合理性

武智秀之先生より,ご恵与賜りました.ありがとうございました.
本書は,第1章から第12章まで「理論篇」,第13章から第24章まで「事例篇」として編まれています.そして,第25章では論文作成法が説明されています.まず,理論篇では,福祉国家というマクロ的な視点から,政策の形成と編成の全体性を解説されたうえで,政策がもたらす財の種類と影響,政策手法,そして,政策を決めるプロセス,プロセスで活動する主体,そして改めてマクロ的体制へと,政策を理解するための枠組みが分量と内容がバランスよく配置されており,政策を学びたいという学生にとっては,段階的に理解を積み重ねることが可能な構成と存じました.事例編では,第13章から第24章まで,多分野にわたり政策が解説されています.しかし,いずれも単なる政策,制度,組織の概説ではなく,各政策分野に関する既存理論・実証研究の成果に基づき解説がされています.初学者のみならず,さらに進んで学びたい学生にとっても,そのニーズにこたえ,学としての政策を理解を深めることが可能内容と存じました.
また,やはり本書の魅力の一つはコラムです.一つひとつコラムが緩やかな連作となっています.本書のコラムも既に一つの著作であるとの感想を持ちました.「遠くに利益を置くこと」「現実を理想に近づけること」(250頁)のように,各コラムの内容と一文一文が,学生のことを思い,学びたいという意欲をもつ学生への愛情が溢れており,下名も蒙が啓かれるメッセージばかりです(例えば,「結局,大学で教師が学校でできることは自分について気づかせてあげることくらい」(249頁)).政策を学びたい学生が,まずは本体である理論と事例に基づき,さらに研究を進めたい学生が第25章を読む流れと,社会科学の学び方を知りたい学生が,コラムを読み進め,最後に第25章を読む,という,2つの流れが25章で合流する構成からなる,一冊で2度おいしい著作と存じました(第25章は,下名の演習に参加されていた3年生の皆さんに早速紹介しました).
心より御礼を申し上げます.誠にありがとうございました.