何事もないことを祈りつつ待ちつづけることを終えた本日.本日は,東京大学社会科学研究所が刊行されている『社会科学研究』に掲載された論攷.
復興特区制度を,「総合化」「手続化」「分権化」の3つの「法技術的特色」(181頁)から分析された本論攷.「手続に傾斜した法的統制手法」(183頁)であることを改めて感じつつ,手続化の要因としての次の分析に,なるほどと思いました.

特区制度による地域間の政策競争は, 必ずしも特区以外の地域にメリットだけをもたらすものとは言えない. 例えば, 特区制度により課税減免措置が採られたことにより, 特区以外の地域から特区へと企業が生産拠点を移転させることになれば, 移転元地域にとっては特区が負の外部性を与えることになる. そしてそのような可能性は, 特区の指定数が限定されている総合特区よりも, そのような限定がない復興特区により大きく存在する. 復興特区に見られる手続化の傾向は, その正当化のための一つの手段と位置づけられ得る. つまり, 被害の状況やこれから目指すべき復興の姿を地方公共団体が国に説明する手続を通して当該特別措置の正当化が個別に図られ, あるいはその際に他地域への負の外部性を抑制する方策が採られるよう修正される機会が設定されていると考えることもできるのである.」(188頁)