川崎市役所本庁舎の建て替えを含む耐震対策などを検討してきた「本庁舎・第2庁舎耐震対策基本構想検討委員会」(委員長・大西隆慶大大学院特別招聘(しょうへい)教授)は15日、現庁舎敷地での建て替えや新庁舎の基本的な役割・機能を盛り込んだ基本構想素案をまとめ、阿部孝夫市長に報告した。
 基本構想素案では、(1)本庁舎・第2庁舎の抜本的な耐震対策手法(2)新庁舎整備の立地場所(3)新庁舎整備の基本的考え方−をまとめた。(1)は「庁舎建て替え」、(2)は「現庁舎敷地での建て替え」との結論を示した。(3)は▽災害対策活動の中枢拠点としての機能▽効率的な執務が可能で、将来の変化に柔軟に対応できる▽地球温暖化対策の積極的な推進で環境にやさしい▽市の文化情報を発信し、国内外からの客をもてなし、市民からも親しまれる▽まちづくりに資する−などと新庁舎の役割・機能を表現している。
 市はこの素案を基に基本構想案を示し、パブリックコメントを経てから本年度中に基本構想を策定する。大西委員長から報告を受けた阿部市長は「おおむね納得できる結論。財政フレームをきちんと検討しなくてはいけない」と話した。大西委員長は「職員の執務だけでなく市民が集まり、多目的に使われる機能を持たせる新しい時代の市役所を考えてほしい。市民の広範な意見をもらったうえで最終的な方向を決めてほしい」と話した。委員会は大学教授や市内の各種団体の代表、公募の市民ら11人で構成され、5月から4回開かれた。

本記事では,川崎市における庁舎の耐震対策の検討結果を紹介.2013年7月1日付の本備忘録で記録した同市が設置された「本庁舎・第2庁舎耐震対策基本構想検討委員会」における同検討.同委員会による検討結果は,同市HPを参照*1
自治体の庁舎規模算定の際に使用される「総務省地方債同意等基準運用要綱」に基づく,「一般職員1人あたりの事務室面積基準(4.5㎡人)」と比べても「既存庁舎全体では3.0㎡/人」「既存庁舎及び賃借ビル全体では3.4㎡/人」と「いずれにおいても基準値(4.5㎡人)を下回る数値」*2となる同市役所.
同委員会では,耐震性,老朽化,規模,コスト,設備・機能等の5項目から「効果の分析」*3.まず,「耐震性」は「本庁舎は補強工事を行うためには杭・基礎の更新が不可欠」であること,「地下階にある受変電設備、空調設備等の撤去が必要」なこと,「建設当時の詳細な図面が無く」「杭・基礎の状態が不明で工期・工法が不確実なこと」(そういうものなののですね)から「補強工事の実施が困難」との判断.次いで,「老朽化」では「耐震補強案」は「工事の実施では耐用年数は延長され」なく「年々老朽化が進行していくため」「抜本的解決にはな」らないと分析.三つめの「規模」では,「耐震補強案は分散化,狭あい化の解消は不可能」であること,そして「狭あい化解消のためには」「民間ビルの追加賃借が必要」となるため「賃借料負担が増加」し「分散化がさらに進行」することを指摘する.四つめの「コスト」では「初期費用,50 年間に掛かる費用,庁舎売払収入の合計」から推計すると,「耐震補強案」は「1,177 億円」,「現地建替案」は「1,081 億円」,「別地建替案」は「1,082 億円」とみる.最後の「設備・機能等」では,「耐震補強案は新たな設備・機能等は小規模なものしか導入でき」ないことからも「現状の課題は部分的にしか解決できま」*4ないと判断.
以上の結果から,同委員会では「耐震補強案」,「現地建替案」,「別地建替案」を比較考慮すると,「庁舎建替案」が優位になるとの判断が示されており,加えて「新庁舎の整備は「現庁舎敷地での建替え」*5案を提示する.現庁舎の保存による,庁舎以外での目的外使用の可能性は難しいのだろうか,今後の検討状況も,要経過観察.

*1:川崎市HP(市政情報広報・広聴報道発表資料報道発表資料(総務局))「川崎市本庁舎・第2庁舎耐震対策基本構想(素案)」(平成25年11月)

*2:前掲注1・川崎市川崎市本庁舎・第2庁舎耐震対策基本構想(素案))10頁

*3:久米郁男『原因を推論する 政治分析方法論のすゝめ』(有斐閣,2013年)237頁

原因を推論する -- 政治分析方法論のすゝめ

原因を推論する -- 政治分析方法論のすゝめ

*4:前掲注1・川崎市川崎市本庁舎・第2庁舎耐震対策基本構想(素案))19頁

*5:前掲注1・川崎市川崎市本庁舎・第2庁舎耐震対策基本構想(素案))35頁