太陽光パネルの普及に向け、京都市が景観基準を見直した。パネルの色や並べ方など地域ごとに細かく設定していた規制を分かりやすくし、業者が売り込む環境を整えるのが狙いだ。「景観」を保ちつつ「環境」で巻き返せるか。両立を目指す試みが始まった。
 「どうしても太陽光パネルを設置するというのなら、建築確認はおろしません」。6年前、風致地区の自宅の建て替えに合わせてパネルを設置しようとした電気会社社長の河村泰三さん(59)=右京区=は、市役所窓口でのやりとりを鮮明に覚えている。「自ら使って顧客に良さを伝えたいし、環境にも貢献できる」との思いは、あっさり否定された。
 市は景観規制をかける地域で「根本的には日本瓦を隠さない屋根」を目指している。パネルの色は屋根に調和する黒や濃い灰色とし、価格が安く一般的な青色パネルは禁止。屋根の形に合わせ設置するよう指導もする。設置業者も規制に合うか確認するため、畳一畳ほどのパネルを市役所に持ち込んだり、設置完了時の図面を彩色して提出したりと手間は膨大だった。「京都市内は市場と考えず、主に宇治や滋賀県などで仕事をしてきた」(京都電気消防設備団体連絡協議会)という。
 市内のパネル普及率は政令市で下から3番目。景観保全に加え、市は「原発に依存しない社会の実現」を目指しており、11月には市内太陽光パネル発電量を10年度の約50テラジェールから20年度までに800テラジェールへと大幅に引き上げる目標を掲げた。今回の基準見直しは、この目標達成への布石だ。パネルメーカー主要6社も、市の要望を踏まえ、濃い紺色などの景観配慮型製品を開発。景観上不適合となりやすい色むらも減り、パネルの「景観」問題は解消されつつあるという。実際に普及するには設置業者の売り込みが最大のカギを握るため、今回、設置の手間を大幅に減らした。指定した色見本に合えばパネルを市役所に持ち込む必要はなくなり、規制エリアも「設置できる」「道路などから見えなければできる」「設置できない」の3地域に大別した。パネル設置への国の助成制度は14年度から無くなり、余剰電力の買い取り価格も15年度から大幅に下がる見通しだ。「お得ですと売り込めるのは、15年度が最後のチャンス」(市地球温暖化対策室)でもある。
 18日、南区で新基準の研修会を開いた京都電気消防設備団体連絡協議会の藤井正幹事(66)は「地元業者が景観規制に臆せずビジネス展開する突破口にしたい」と歓迎。今後、太陽熱や小水力発電などあらゆる再生可能エネルギー機器のビジネスチャンスを検討する研究会を設ける。

本記事では,京都市における景観基準等の改訂等を紹介.同改訂等の概要は,同市HPを参照*1
同改訂等の内容では,「太陽光パネル」の「設置に関する規制エリアの分類の簡素化」と「製品開発の動向を踏まえた設置基準の整理」,そして「色彩基準」を「黒と濃い灰色,濃い紺色の3色に統一」*2する.
同改訂等による同市では次の3つの結果を想定する.まずは,「主要な国内メーカー6社すべての太陽光パネルが設置可能なエリア」が「改訂前」は「市街化区域※の5%(760ha)」であったものから「98%(14,665ha),20倍に拡大」することである.次いで,「太陽光パネルが全く設置できないエリア」は「歴史的価値を守るために建物の形や色,素材など」で「凍結的に保存する地域のみ」とすることである.これにより「改訂前は市街化区域の0.2%であったものから」「1/2,0.1%に限定」される.三つめは,「太陽光パネルが道路等から見える場合に設置できないエリア」を「世界遺産周辺や,歴史的な景観が継承されている参道や門前等に限定」するこである.これにより「改訂前は市街化区域の3.6%であったものから,1/18,0.2%に縮小」」*3される,という.
景観と環境という一見する限りでは共通した指向性と想定されなくはないものの,本記事によると両分野でも権限争議が発生する様子も窺えそう.両分野間での「調和」をめぐる「最適水準」*4となるか,今後の同基準等の運用状況は要経過観察.

*1:京都市HP(まちづくり景観広報資料・お知らせ太陽エネルギーの更なる利用拡大に向けて〜太陽光パネルの景観に関する運用基準の改訂等を行います〜)「太陽エネルギーの更なる利用拡大に向けて〜〜太陽光パネルの景観に関する運用基準の改訂等を行ないます」(平成25年12月13日)

*2:前掲注1・京都市(太陽エネルギーの更なる利用拡大に向けて〜〜太陽光パネルの景観に関する運用基準の改訂等を行ないます)1頁

*3:前掲注1・京都市(太陽エネルギーの更なる利用拡大に向けて〜〜太陽光パネルの景観に関する運用基準の改訂等を行ないます)1頁

*4:北村喜宣『環境法第2版』(弘文堂,2013年)43頁

環境法 第2版

環境法 第2版