蒲島郁夫知事は17日、熊本の豊かな地下水を後世に引き継ぐため、「地下水と土を育む農業の推進」を基本理念とする全国初の条例を本年度中に制定する方針を表明した。水田を活用した地下水涵養[かんよう]や肥料・農薬の削減などを強化し、環境に配慮した農畜産業を後押しする「県民会議」(仮称)も設立する。
 県内では生活用水の約80%、熊本地域(熊本市と周辺10市町村)はほぼ100%を地下水に依存しているが、涵養力の大きい水田は減反や市街地拡大で減少傾向。水質を悪化させる硝酸性窒素の濃度も一部で高い値が続いており、農畜産業が排出源の一つとされる。県は、地下水を永続的に保全していくには、消費者や企業を巻き込んだ全県的な環境保全型農業の確立が欠かせないと判断。条例で強力な推進態勢づくりを目指す。
 地下水の「量」を増やすため、需要が見込める飼料用米・稲を増産して水田農業を活性化する。また飼料自給率を高めることで、輸入飼料として海外から県内に持ち込まれる窒素の総量を減らし、環境負荷の軽減にもつなげる。さらに「質」の面では、肥料や農薬の削減に取り組む県独自の「グリーン農業」を加速化。規制の対象外になっている小規模畜産農家にも、家畜排せつ物の堆肥化施設設置を促す。こうした施策が農家の負担にならないよう、必要な支援策も整備する。条例には、環境に配慮した農畜産物の購入を通して農家の取り組みを支える消費者や販売・流通業者の役割も規定。推進母体となる「県民会議」は行政や農業団体をはじめ、学識者、経済団体などで構成し、幅広い県民運動を展開する考えだ。17日の県議会一般質問で、佐藤雅司氏(自民・阿蘇市区)の質問に答えた。(蔵原博康)

本記事では,熊本県における地下水涵養と肥料・農薬削減を目的とした農畜産業に関する条例策定の方針を紹介.
2011年5月10日付の本備忘録で記録した同県による「熊本県地下水保全条例」の「改正」の取組.同条例では「地下水」を「公共水」(同条例第1条の2)と認識し,「特に地下水の水位が低下している地域及びこの地域と地下水理において密接な関連を有すると認められる地域」を「重点地区」(同条例第25条の2)では採取の「許可」(同条例第25条の3)制を「導入」*1している.地下水という「資源の希少性」のなかでの,「過剰利用」を「抑制」*2することになる.
一方で,本記事によると,「地下水を永続的に保全していく」ためには「消費者や企業を巻き込んだ全県的な環境保全型農業の確立が欠かせない」との認識から,農畜産業における地下水利用に際して「地下水の「量」を増や」し「質」を確保するための条例を策定する方針を紹介.涵養しつつ利用することが企図されているようにも窺える同条例案の審議過程は,要経過観察.