佐賀県は、県内の中学3年生全員の約9000人を対象に、胃がんの主な原因とされるピロリ菌の感染検査を実施する。検査はあくまで任意だが、本人の了解を得た上で、学校健診の尿検査の試料を用いる。感染している生徒の除菌治療費の自己負担分も助成する。健康増進課は「都道府県単位での取り組みは全国初ではないか」としている。2016年度当初予算案に関連経費約2570万円を盛り込む方針。
 県によると、14年の75歳未満の人口10万人当たりの胃がん死亡率は全国ワースト2位だった。ピロリ菌の除菌は早いほど胃がんの発症リスクを減らせる。「胃がんは予防できるがんなのに佐賀では多くの人が亡くなっている。全国に先駆けて撲滅に向けて取り組みたい」と意義を強調する。
 ピロリ菌の検査には採血や呼気などさまざまな方法がある。原則、成人の場合は最終的に内視鏡で胃の状態を確認し、除菌治療には保険が適用される。県は公立や私立、特別支援の全中学で実施されている尿検査の試料の残りを用いることで負担感なく感染を調べる。感染疑いの生徒には追加で検便を実施し、感染の有無を確定する。除菌には胃酸を抑える薬と抗生物質を組み合わせた飲み薬を1週間ほど服用する。この薬の対象が中3の15歳以上となっている。
 県は1人当たりの検査に6000〜7000円、治療費の自己負担分として4000〜5000円の助成を見込む。小児科系の学会の調査によると、中高生の5%程度が感染しているとされ、県内は約300人と推定している。検査事業では、佐賀大学医学部附属病院の小児科との連携も検討している。
 世界保健機関(WHO)の専門研究組織は14年、胃がんの8割がピロリ菌の感染が原因と発表した。特に日本人に多い胃の入り口(噴門部)以外の胃がんでは9割を占めている。

本記事では,佐賀県におけるがん予防の取組を紹介.
同県で,2016年度予算案として要求された「若年期からのがん予防推進事業費」*1.同事業では,「子どもたちの将来的な胃がん発症リスク」の「軽減」を目的に,「県内の中学3年生を対象」に「学校健診の仕組みを活用」し,「ピロリ菌検査・除菌治療を推進する」*2.また,「要治療となった生徒」は「除菌治療費等の自己負担分を助成」*3する.当初要求額は「25,698」*4千円.
「ポピュレーション戦略」*5ともなる同事業.本記事によると「検査はあくまで任意」となる模様.実際の受診状況は,要確認.

*1:佐賀県HP(県政の運営財政予算編成過程の公表平成28年度予算編成過程平成28年度当初予算案の要求状況)「3 主要事業の要求状況」7頁

*2:前掲注1・佐賀県(3 主要事業の要求状況)7頁

*3:前掲注1・佐賀県(3 主要事業の要求状況)7頁

*4:前掲注1・佐賀県(3 主要事業の要求状況)7頁

*5:近藤克則『「健康格差社会」を生き抜く』(朝日新聞,2010年)195頁

「健康格差社会」を生き抜く (朝日新書)

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