非常時、国が自治体へ「指示」 災害や感染症に備え―答申を取りまとめ・地制調(時事通信2023年12月16日)

 第33次地方制度調査会(首相の諮問機関)は15日の総会で、大規模な災害や感染症などにより想定外の事態が発生した場合に備え、国が必要な指示を自治体に出せる仕組みづくりを求める答申を取りまとめた。国民の安全に重大な影響を及ぼす危機に対し、迅速な対応を可能とする狙いだ。地制調は年内にも、岸田文雄首相へ提出。政府は2024年通常国会への法案提出を検討する。

 新型コロナウイルスが流行した当初、感染症対策に関する法律では、広域的な患者の移送や入院調整は想定されておらず、法改正が必要となった。これを教訓に、地制調は非常時に備えた国と地方の関係をあらかじめ整理して、一刻を争う事態にも対応できるよう検討してきた。  

  現行では、地方自治法に国から地方に対する「是正の指示」「是正の要求」の仕組みがあるが、自治体の事務処理に法令違反がなければ出せない。そこで答申は、非常時の国の指示権を自治法に定めることを提言。ただ、国と地方は対等とする分権改革の考え方を踏まえ、あくまで特例と位置付ける。指示は必要最小限度の範囲にとどめ、発動の際は閣議決定による手続きを求めた。  

  答申はこのほか、危機に見舞われた自治体で職員確保が課題となることから、自治体間の職員応援・派遣に関して国の役割の明確化を提案。国が調整して、応援の要求・指示や派遣のあっせんを行う。  答申は、デジタル化を踏まえた方向性も示した。住民や事業者から自治体への公金納付で、キャッシュレス化と収納事務の効率化を推進するため、地方税ポータルシステム「eLTAX(エルタックス)」を活用する必要性を強調。自治体の情報セキュリティー対策では、国が法的拘束力のある指針を定めて、自治体に対応方針の策定を義務付けるべきだと結論付けた。

本記事では、政府における地方制度調査会の取組を紹介。

政府では、2023年「12月23日」に開催された「第33次地方制度調査会」の「第4回総会」*1。同回の同総会では、「ポストコロナの経済社会に対応する地方制度のあり方に関する答申(案)」*2が提出。

同答申案では、「基本的な認識 」、「デジタル・トランスフォーメーションの進展を踏まえた対応」、「地方公共団体相互間の連携・協力及び公共私の連携 」、「大規模な災害、感染症のまん延等の国民の安全に重大な影響を及ぼす事態への対応」*3の4つを言及。

同答申では、「今後の地方行政のあり方に関し」ては、基本的な認識を除く上記の3つの「課題への対応が必要」とし、いずれも独立した課題では相互に繋がりをもち、そのため「情報共有・コミュニケーションの重要性を指摘」*4したうえで、「それぞれの地域という物理的な空間において住民の福祉の増進を最大化させようとしてきた地方自治のあり方、また、地方公共団体と国、他の地方公共団体、さらに、地域社会の担い手、住民など様々な主体との関係を、新たな時代に即したものにしていく必要」*5との認識を基調に、同調査会が検討した自治の実践での業務改善案と運用案ととともに、地方自治制度改正に向けた必要事項を示す。

制度改正に向けた提案と思しき事項では、「公共私の連携」では、「市町村が構築した連携・協働のプラットフォームにおいて、多様な主体が活躍できるようにするため、様々な関係者と連携・協働して地域課題の解決に取り組む主体については、法律上も、市町村の判断で、その位置付けを明確にすることができるようにする選択肢を用意して、活動環境を整備していくこと」*6がある。

「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」に関しては、まずは「個別法において備えるべき事態を適切に想定し、必要な規定が設けられ、これによって、個別法及び地方自治法上の国等の権限が適切に行使されるようにする」*7ことを求めている。そして「個別法の規定では想定されていない事態が生じた場合」*8を想定し、「地方公共団体の事務処理が違法等でなくても、地方公共団体において国民の生命、身体又は財産の保護のために必要な措置が的確かつ迅速に実施されることを確保するために、国が地方公共団体に対し、地方自治法の規定を直接の根拠として、必要な指示を行うことができるようにすべき」*9ことを提案している。

総じて「都道府県、そして国もそれぞれの役割を果たして広域的・全国的な取組を行うこと」*10の視点からの自治の実践と業務改善、そして、制度改正に向けた提案となる同答申案。「コロナ禍で顕在化した国と自治体との業務分担」や「それぞれの役割や機能」*11を踏まえた今後の制度改正案の内容は要観察。

*1:総務省HP(組織案内 : 審議会・委員会・会議等地方制度調査会会議資料)「 第33次地方制度調査会第4回総会 

*2:総務省HP(組織案内 : 審議会・委員会・会議等地方制度調査会会議資料 第33次地方制度調査会第4回総会 」)「 資料ポストコロナの経済社会に対応する地方制度のあり方に関する答申(案) 

*3:前掲注1・総務省 資料ポストコロナの経済社会に対応する地方制度のあり方に関する答申(案)

*4:前掲注2・総務省 資料ポストコロナの経済社会に対応する地方制度のあり方に関する答申(案))3頁

*5:前掲注2・総務省 資料ポストコロナの経済社会に対応する地方制度のあり方に関する答申(案))23頁

*6:前掲注2・総務省 資料ポストコロナの経済社会に対応する地方制度のあり方に関する答申(案))15頁

*7:前掲注2・総務省 資料ポストコロナの経済社会に対応する地方制度のあり方に関する答申(案))17頁

*8:前掲注1・総務省 資料ポストコロナの経済社会に対応する地方制度のあり方に関する答申(案))19頁

*9:前掲注2・総務省 資料ポストコロナの経済社会に対応する地方制度のあり方に関する答申(案))20頁

*10:前掲注2・総務省 資料ポストコロナの経済社会に対応する地方制度のあり方に関する答申(案))4頁

*11:森田朗『新版現代の行政 第2版』(第一法規、2022年)75頁