都道府県初の法定外税として神奈川県が01年に導入した「臨時特例企業税」は違法だとして、同県藤沢市に工場があるいすゞ自動車(東京都品川区)が県を相手取り、約19億7900万円の返還と条例の無効確認などを求めた訴訟の判決が19日、横浜地裁であった。北沢章功裁判長は「企業税は地方税法の規定に反して違法で無効」と認定し、いすゞ側の請求通り、同県に計約19億7900万円の支払いを命じた。同県は判決を不服として、控訴する方針。
臨時特例企業税は資本金5億円以上の企業が対象。企業は、当期利益が出ても、過去の赤字を欠損金として繰り越せる規定を利用して相殺すれば、その分の法人事業税が控除される。臨時特例企業税は、この相殺額と同じ額を当期利益に課税している。県は、資本金や売上高などを基準に税額を決める外形標準課税の導入で税収が安定するまでの「つなぎ」として01年8月に導入。外形標準課税が導入された04年度以降は税率を下げ、09年3月までに段階的に廃止することを決めている。判決は企業税について「課税対象は、実質的に法人事業税が控除としている繰り越し欠損金だ」と指摘し、「企業税の創設は、全国一律に適用すべき法人事業税の課税規定の目的や効果を阻害しており、地方税法の趣旨に反している」と認定。県側が「企業税は当期所得に対して課税しており、繰り越し控除を遮断するものではない」とした主張を退けた。また、県が企業税を創設する際に、地方税法に基づいて総務大臣の同意を得ている点について、判決は「異なる行政間において、施策の整合性を確保するという行政目的。企業税の適法性を審査する性質のものではない」とした。県によると、臨時特例企業税の徴収額は、02〜06年度に約370億2900万円で、のべ3292の企業が納付。07年度は44億8400万が課税される見込みで、徴収総額は約415億1300万円になるという。判決後、松沢成文知事は「企業税は先進的な取り組みで、総務省の同意を得れば導入できると考えていた。地方分権改革にブレーキをかける判決」と批判した。
 総務省によると、「産業廃棄物税」や「核燃料税」などの法定外税は全国でのべ55自治体が導入しており、06年度決算額は計約560億円にのぼるという。

同記事では,神奈川県の法定外普通税である臨時特例企業税が,横浜地裁にて地方税法違反の判決が示されたことを紹介.
法定外普通税については,地方分権推進委員会の第二次勧告を受けて,自治(総務)大臣の許可制から協議制へ移行された.この協議は,(総務大臣の)「同意を要する協議」である.そして,地方税法第261条にもあるように「国税又は他の地方税課税標準を同じくし、かつ、住民の負担が著しく過重となること」,「地方団体間における物の流通に重大な障害を与えること」,「前2号に掲げるものを除くほか、国の経済施策に照らして適当でないこと」の3つの事由以外には同意をしなければならない仕組みとなっている*1.これにより,法定外普通税の積極要件に関する判断領域(又は,責任領域)は限られており,消極要件に関する判断に限定されている.そのため,「地方分権に適合された制度に抜本的に改められることとなった」*2とも制度設計時には評価されている.
同記事の興味深い点は,同意の性質についてである.同記事では,横浜地裁での判決では,総務大臣の同意が「施策の整合性を確保」に止まるとある.そうなれば,「同意を要する協議」とは,ほぼ認証手続のようなものであり,総務省の判断領域はほぼ皆無との見解が示されたこと理解できるのだろうか.同判決も一つの司法判断であり,当該理解の妥当性は更に審議が必要であるかと思うが,例えば,同理解に基づき制度を考えてみれば,総務省の同意も必要であるのかという疑問も思い浮かぶ.恐らく霞の中で遠く希望の彼方に見ていた「分権型社会」の現実とは,行政機関間による解決の機会は稀少化し,司法判断の領域が拡大することでもあるのだろうか.

*1:法定外税の協議制度と同意状況については,総務省HP「法定外税の協議制度と主な同意の状況」を参照

*2:松本英昭『新地方自治制度詳解』(ぎょうせい,2000年)429頁

新地方自治制度詳解

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