厚生労働省は1日、75歳以上の高齢者を対象にした「後期高齢者医療制度」について、呼び名を「長寿医療制度」とすることを決めた。高齢者から「年齢で区別するのは納得できない」「早く死ねといわんばかりだ」などの批判が出ていた。厚労省は目的や内容の理解を深めてもらうため対策本部を設置した。同制度は膨張する医療費を高齢者にも応分に負担してもらうのが狙い。1人当たりの医療費の多い都道府県に住む高齢者や高所得者に高めの保険料を負担してもらうのが特徴だ。ただ、民主党など野党は「財政負担の削減ありきで高齢者の負担が増す」などと反発し制度の廃止を求めている。福田康夫首相は同日午前の閣僚懇談会で「名称を含めて工夫し、意義ある制度であることを国と自治体が連携してPRしてほしい」と指示していた。

昨日,帰宅後NHKのニュースを見ていたら,後期高齢者医療制度のことを「長寿医療制度」の名称で,同制度を説明していた.NHK独自の名称かとも思い遣り過ごしていた.その後,首相のイニシアティブにより,導入当日に名称変更(通称利用)とのことを知る.既に現場から被保険者の方々には,広報・告知が済んでいるなかで,首相からの発意にやや驚嘆.保険者の業務担当現場,各自治体,そして,何よりも既に保険証を受け取った被保険者の方々が,名称変更(通称利用)により,制度自体への理解の入口への混乱を招くのではないかと不安を抱く.眞壁仁先生がご指摘されているように「人間は,イメージを創り出し,またそれに拘束される存在であり,同時に象徴を操作し,またそれに操作される存在でもある」*1ことを実感.
なお,同記事では,厚生労働省が通称利用を「決めた」とあるが,どういう手続を持って決めたということになるのだろうか,不勉強であるためか,よく分からない.また,例え,厚生労働省が「決めた」場合であっても,その通称利用を各保険者に対して,どのような理屈で求めることとなるのだろうか(「保険者の自治」などは無いも等しいだろうか).ただ,特別地方公共団体である広域連合への関与については,地方自治法上は沈黙している.この点も,よくよく考えてみるとよく分からない.

*1:眞壁仁「政治的象徴」辻康夫・松浦正孝・宮本太郎編『政治学のエッセンシャルズ』(北海道大学出版会,2008年)108頁