市制施行50周年を迎えた角田市は行政施策・観光・医療などさまざまな情報を盛り込んだ「くらしの便利帳」を官民協働事業(PPP)方式で30年ぶりに発行することにした。行財政改革集中プランの一環として、財政負担をなくすため、電話帳などを発行している「サイネックス」(大阪市)と連携。便利帳と電話帳を一冊にまとめて共同発行する。栗原市に次ぎ全国でも2例目の試みという。
 発行する便利帳は、A4判約170ページ。電話帳と市関連情報を掲載し、約1万3000部印刷。9月後半に市内全世帯に無料配布する。サイネックスが自ら募集した広告収入を元に、紙面の割り付け編集、印刷、配布などを実施。市の経費負担はゼロとなる。20日に市役所で共同発行協定を締結。佐藤清吉市長は「電話帳と市の情報を組み合わせることで、市民にとって便利度が倍増する」とあいさつ。サイネックスの鈴木進北日本支社長は「地域に貢献できる事業としてスタートした。市民サービスにつながればうれしい」と語った。【豊田英夫

同記事では、角田市において「くらしの便利帳」を官民協働で作成し、その内容を電話帳を組み合わせたものとすることを紹介。インターネット環境にある者にとっては、「くらしの便利帳」の類の利用は現在では皆無かと思われるものの、インターネット環境にない方々には行政・生活情報の入手のためには、利便性が高い媒体であることは確か。そのため、情報の質量の良化と検索手続きの負担軽減化となれば望ましい事例。
同記事に紹介された、官民協働として「くらしの便利帳」を作成されている同社の取り組みを見てみると*1和泉市大阪狭山市木更津市那覇市水戸市太宰府市三鷹市市原市岸和田市山形市柏市では、広告収入による市側の経費負担なく同便利帳を作成していることが分かる。これらを見ると、財政状況等に規定されず、種々の都市自治体で官民協働方式を採用されているとも思える。ただ、電話番号が掲載された便利帳となると、同業種の競合他社の情報(電話番号)もまた掲載されることとなり、それまでにほぼ事業者としての広告掲載としていたことで得ていたはずの「独占的」な利益を縮減する可能性もあるのかとも(直感的には)考えられる。これに対しては、ある意味「情報連携としての企業間協調」*2が発生し、消費者動向としては、広告掲載された事業者に対する電話利用率もまた高くなるとの見通しがあるのだろうか。観察対象としても興味深い。
1890年に「電話加入者人名表」が197名の電話番号を掲載した一枚紙として発刊され、「電話番号簿」と名を変えはじめて広告が掲載されたのが1931年。その後、職業別、小型化、50音順、「電話帳」への名称変更、資源循環型等のように、利用者の需要に応じて、その形態や掲載内容を改めてきた電話帳*3。毎年、約12万部も発刊する「ベストセラー」的媒体としては、自治体行政との連携は、もっと早期に共同できなかったのかなあとは思うものの、今回の取り組みにより約120年ぶりの邂逅。

*1:サイネックスHP「官民協働事業

*2:藤本隆宏『能力構築競争』(中央公論新社、2003年)265〜266頁

能力構築競争-日本の自動車産業はなぜ強いのか 中公新書

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*3:NTT・HP「タウンページ博物館:電話帳の歴史