世界遺産の島、宮島の環境保全文化財保護に充てる「入島税」導入を、廿日市市が検討している。制度化すれば、世界遺産を守る法定外目的税としては全国初となる。ただ、独自課税導入が反発や混乱を招いた事例も多い。課税の原則である負担の公平性をどう確保するのか。徴収方法は。検討過程で課題が浮かび上がってきた。
 沖縄県伊是名村は、沖縄本島からフェリーで1時間の離島だ。村は、ビーチや森林公園の維持整備を目的に2005年、「環境協力税」の名目で入島税を導入した。船や航空運賃に上乗せして入島1回1人100円を徴収。観光客に限らず、島外に出かけて戻ってきた村民も課税対象である。宮島の場合は島外に通勤する住民も多く、課税対象となれば、毎日のように税負担を強いられる。国は、住民負担が著しく過重になる法定外目的税は認めがたいとの立場。住民に大きな負担をかけず、どう公平性を確保するかが最大の焦点だ。しかし住民を非課税とした場合、今度は島外からの通勤者への対応が問題になってくる。総務省自治税務局は「しっかりとした理念や目的が必要。不公平感をなくすため、納税者や業者と慎重に議論してほしい」と求めている。

同記事では,廿日市市で,法定外目的税として,宮島への入島税の導入を検討していることを紹介.廿日市市では,どれくらい議論を進めているのだろうか.要観察.
入島税については,同記事にもあるように,伊是名村では導入されている.次いで,座間味村でも導入を検討され,住民会議を設けて本年3月まで議論を行ってきた*1.同会議の結論では,環境目的では漠然としている点,観光客数の減少への懸念,税徴収以外での資金作りの有効性,周知不足等を理由に「環境目的税の導入には会議として賛成できるものではありません」との見解が示されている*2.入島へ課税の目的が,環境保全であるのか,多すぎる入島者を抑制することであるのかによって,本来的に税とすべきか否かの議論は分かれるように思われる.制度は異なるものの,税を通じて,交通需要抑制し,環境負荷の低減効果をももたらすことが想定されている「ロードプライシング」を見てみると,ロンドンにおける同制度導入に対する分析結果によれば,「渋滞の緩和,バス利用の促進」となり「環境負荷の軽減」という面で「一定の効果をもたらしている」*3ともされる.入島税の目的はどこに置くのであろうか.もちろん,環境負荷の逓減・文化財保護を主とすることもよい.ただ,そうであれば,税に限らず,外部来島者への入島料等の税以外での資金調達方法もまた考えられる.結局は,入島税もまた導入による「パブリックアクセプタンス」への寄与*4が理論上,そして実態上導き出されるかなのだろう.

*1:座間味村HP「環境目的税を考える座間味村住民会議

*2:座間味村HP『環境目的税を考える住民会議での議論取りまとめ

*3:奥真美「ロードプライシング環境負荷の低減」『環境管理』Vol.43,2007年4月号,63頁

*4:朝日ちさと「混雑と道路投資」關哲雄・庭田文近編著『ロード・プライシング』(勁草書房,2007年)134頁

ロード・プライシング―理論と政策 (日本交通政策研究会研究双書 23)

ロード・プライシング―理論と政策 (日本交通政策研究会研究双書 23)