【白老】胆振管内白老町議会(堀部登志雄議長、定数一六)は二十六日、これまで年四回に分けて開いてきた定例会を「通年議会」に変更する議員提案による条例改正案を全会一致で可決した。六月から導入する。同町議会によると、全国初の試みという。
 通年議会は、会期を一−十二月の一年間とする。閉会期間がなく、招集手続きも不要。議長判断で議会が再開できるため、迅速な審議ができ、議会の活性化につながるという。昨年六月から試行を続けてきた同町議会は、六月からの本格導入に合わせ、災害時の応急的な予算補正などは町長の専決処分とすることや、委員会などへの説明者を最小限とするなど、行政側の負担軽減のルール化を図る。通年議会の導入について、全国町村議会議長会全国市議会議長会ともに「会期を年一回とする例は聞いたことがない」とする。

同記事では,白老町で本年6月より「通年議会」とすることを紹介.議長や委員長が,本会議や委員会の休会・再開の判断を行うことで運営する模様.2004年の地方自治法改正により,定例会の開催は,従来の年4回以内での開催との規定から,条例でその回数を定めることができるようになった.いわば会期規制が緩和されたことを受けての取り組み事例の一つか.同改正では,回数の上限撤廃と解されてきた(つまり,4回以上の開催も可とすること).同町の取り組みは,回数は減少させるものの通年制とすることで,回数増加以上の効果(いわば,熟議の機会の増加)を期待することを想定されているのだろう.
新川達郎先生による分析では,一連の地方分権改革論議の中での「議会改革」という課題に関しては,「その機能不全を解決することにあって,制度改革よりも運用改善に関心があった」*1とされ低調気味であった.そして,上記の地方自治法における定例会開催規制の自由化についても,「すでに,運用面での改革は,各議会自身によって自主的かつ先行的に進められてきている側面もあり,実質的にこれらの改革がどの程度の効果があるのかは不確か」(59頁)とも分析されている.同町の試みは,その効果を証明することとなるか,興味深い事例.
個人的には,「通年化」による議会運営への影響もまた興味深いテーマと思う.例えば,地方自治法第119条には「会期不継続の原則」がある.これは,会期中に議決に至らなかった事件は会期終了とともに消滅し,後会には継続しないことを定めることで*2,各期毎の自立性を保障しているものである.これは,非政権党にとっては,望ましくない事件の審議を,会期という時間を用いて審議未了等に誘導することができる有効な仕組みにもなる.片や,議案を主導する側には会期に制限は,その勢力状況次第では不利な制度要因ともなり,議案の成立に向けて会期延長の行動を取ることにもなる.通年化は「会期不継続の原則」が無くなることでもあり,一見すると議案主導側には有利となる仕組みかとも思われる.国会について見てみると,国会法制定直後の国会運営では,政権党はその提出する法案成立のために会期延長を繰り返し,一方,非政権党では延期回数の制限を行ってきた事実もある.そして,この現状を受けて1958年には国会法が改正され,常会は1回,特別会及び臨時会は2回の延長までと上限が設定された*3.これにより,会期に終わりを設けることで,特定勢力に左右されない議会としての自立性の確保が優先されたといえる.
では,通年制による「終わりなき旅」のなかでは,どうなるのだろうか.利得を増加させることになるのは,多数会派か,あるいは少数会派か,はたまた執行部側なのではないか,と色々考えてみると,議会運営の一つの実験としては興味深い.

*1:新川達郎「地方分権改革と地方自治」『年報行政研究43 分権改革の新展開』(ぎょうせい,2008年)55頁

年報行政研究43 分権改革の新展開

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*2:田谷聰「議会の会議における諸原則」井上源三編『議会』(ぎょうせい,2003年)352頁

議会 (最新地方自治法講座)

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*3:川人貞史『日本の国会制度と政党政治』(東京大学出版会,2005年)206〜207頁

日本の国会制度と政党政治

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